<甲子園交流試合・2020センバツ32校>大阪桐蔭、躍動の夏 聖地で輝く1勝 /大阪
2020年甲子園高校野球交流試合最終日の17日、大阪桐蔭は第1試合で東海大相模(神奈川)と対戦。先制後、逆転されたが、終盤に再逆転して4―2で勝った。全国各地から集まる選手が「日本一」を目指す舞台ではなかったが、大阪桐蔭ナインは1試合限りの甲子園で躍動、新型コロナ禍が続く特別な夏を勝利で締めくくった。【荻野公一】 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら ふらふらっと上がった打球が左翼線のフェアゾーンに落ちた。同点の八回1死二、三塁。2走者が生還して藪井駿之裕主将(3年)は一塁ベース上で拳を握った。 一回、けがから復帰した捕手の吉安遼哉選手(3年)が右前適時打を放って先制した。先発のエース藤江星河投手(3年)は、打線が持ち味の東海大相模に対し、130キロ台後半の直球と、磨いてきたチェンジアップを駆使しながら六回まで毎回三振を奪う。七回に逆転を許す2点適時打を浴びた後、八回から2年生の左腕松浦慶斗投手にマウンドを譲った。藤江投手から「お前のベストピッチを出せ」と送り出された松浦投手が3者凡退に抑え、味方の反撃につなげた。 八回、勝ち越しの好機に打席に立った藪井主将に対し、一塁側スタンドの大阪桐蔭応援団からこの日初めて手拍子が起こる。 2ボールから3球目にスクイズを試みたがファウル。その後は粘って9球目だった。内角の直球を思いっきり振り抜き、決勝打になった。 校歌を歌い終わり、ベンチ前で「背番号14」の主将は右腕で涙を拭う。同級生の申原理来投手は通り過ぎざまに手で背中をポンとたたいた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇最高の試合で恩返し 藤江星河投手(3年) 大阪桐蔭のエースナンバーを背負った投手の表情は、晴れやかだった。 「日本一に一番近いチームでやりたかった」と長崎県を離れた。入学当初は周囲のレベルの高さに「やって行けるのか」。不安になり、携帯電話がないため、学校内の公衆電話から実家にかけた。電話口の母優子さんから「自分が決めた道。力を出し切りなさい」と諭された。 名門の「背番号1」は憧れだった。しかし、いざ付けると責任の重さを感じるようになった。「投げるごとに打たれるのが怖くなった」。そんな時、西谷浩一監督から「ヒットは打たれてもいい。そこからどう抑えるかだ」とアドバイスをもらい、心が落ち着いた。 東海大相模戦は六回から足が疲れ、チームの勝利のためと後輩に託した。長崎からフェリーに乗って息子の様子をよく見に来ていた優子さんは、府の独自大会から「1試合も見逃したくない」と大阪市内のホテルに長期間、宿泊した。一方、仕事でなかなか息子の試合を見ることがなかったが、小さいころから一緒に野球をやってくれたのは父清智さん。 2人がスタンドから見守る中、「最高の場所で最高の相手、最高の仲間と野球ができた。2年半、両親には苦労を掛けたが、いい恩返しができたと思う」。大学で野球を続ける。【荻野公一】 ……………………………………………………………………………………………………… 東海大相模 000000200=2 10000012×=4 大阪桐蔭 (東)石田、笠川、諸隈―神里 (大)藤江、松浦―吉安 ▽二塁打 池田(大)