負債2億円から年商8.5億へ大躍進 沖縄県民のソウルフード「沖縄天ぷら」店の多角化戦略
上間 「沖縄は本土と違って独自の法事行事が年間、多くあります。どんな料理を準備したらいいか分からないという人たちが多くなっている中で、個人向けにパンフレットを配布して、県内全域で無料配達するサービスを始めました。今ではUber Eatsなどの配達サービスも沖縄で身近に、なりましたが、当時は配達サービス自体が珍しかったです」 大手スーパーは廃棄ロスや発注ミスを懸念して大量受注を積極的に行っていませんでした。個人を想定した法事用マーケットにはほぼ競合がいない状況でした。 “モデル”が存在しない初めての事業で、適切な単価が分からない状況に従業員たちからは「単価が安かったらどうするのか」と反発の声が続出しました。上間さんは会長と一緒になって現場で説明してスタッフに理解を求め、事業をスタートさせました。 人海戦術で各家庭への配達を開始し、サービスを知ってもらうためにパンフレットをポスティングするなどし、徐々に認知度を高めました。また注文予約を前日までに行えるようにしました。 「沖縄の人はギリギリにならないと動かない県民性があるんです。前日に注文予約ができることも評判になりました」
店舗数増やし工場の稼働率を向上
新規事業は開始から数カ月後に予約が殺到し電話が鳴りやまない日もあるほど受注が入るようになりました。デリバリーでは、法事用の重箱だけではなく、豚肉やニンジン、昆布が入った沖縄風炊き込みご飯「ジューシー」のおにぎりや弁当の配達も展開しました。法人化時に1億円だった年商が2010年には3億円に増えました。「この配達事業の成功が今、会社を支える基盤になりました」と上間さんは振り返ります。 一方、再建で最もネックとなっていたのは両親が建てた工場でした。元々弁当や総菜は店内の調理場で作っていました。当時、両親は販売スペースを広くしたいとの考えで、店の裏側に調理場を伴う工場を建てたのです。ただ、当時の工場の稼働率は30%で、早朝に販売する弁当の総菜を作るためだけに夜中に稼働していた状態でした。 そこで、工場の稼働率を上げるために取り組んだ施策が店舗数を増やすことでした。沖縄の法事行事を重んじて積極的に行っている地域を選び、2015年までにうるま市勝連、沖縄市山内、浦添市牧港の3店舗の出店を実現させました。これら計4店舗で販売する天ぷらや総菜の製造で工場の稼働率を上げていきました。 パーティーや会合などで利用できるケータリングサービスもスタートさせました。ケータリングでは、天ぷらだけではなく、ジューシーおにぎりやミニハンバーガー、タコライス、ポーク玉子おにぎり、チーズケーキなど20種類の料理を提供しました。