Suica「タッチなし」で乗車可能に、個人間送金も JR東、Suicaを10年で「生活のデバイス」に変革
JR東日本は10日、「Suica」のデジタルプラットフォーム化を目指した将来戦略を発表した。これまでの「移動のデバイス」という立ち位置から、「生活のデバイス」への変革を目指す。 【画像】今後10年でどう進化する? Suicaのロードマップを見る 現在のSuicaは、ICカードやモバイル端末で、SF残高やチケット情報を管理していた。同社では現在、Suicaの主要機能をセンターサーバーへ集約することを目指しており、これにより新たな形態でのサービス提供が可能となる。 同社では、2028年度をめどに、「Suicaアプリ」(仮称)をリリースし、センターサーバー管理型の鉄道チケットの提供を開始する。これにより、月料金の支払いで、ある駅からの運賃が50パーセント割引となるようなサブスク商品や、記念日、買い物などで配信する鉄道クーポンといった、これまでにないようなサービスが提供できるとしている。また、センターサーバー化することで、タッチせずに改札を通過できる「ウォークスルー改札」、改札機がない駅での「位置情報等を活用した改札」の実現を目指す。 加えて、2024年現在は首都圏、仙台、新潟、盛岡、青森、秋田にわかれているSuicaエリアを、2027年春頃に統合することも発表。現在はエリアまたぎの利用はできないが、将来的には常磐線上野~仙台間といった複数のエリアにまたがる区間をSuicaで利用できるようになるという。Suica未導入エリアでは、モバイルSuicaアプリで購入できる「スマホ定期券」(仮称)の発売を予定する。さらに将来的には、「位置情報等を活用した改札」の実現により、JR東日本の全線でSuicaが利用できるようになるという。 Suica利用には事前にチャージが必要という方式にも手を加える。同社では、センターサーバー化により、クレジットカードや銀行口座とSuicaの紐づけを可能とすることで、チャージする必要のない「あと払い」の実現を目指す。 さらに、鉄道利用やショッピングの少額決済以外でも、Suicaの普及を目指す。2026年秋頃には、モバイルSuicaアプリを大幅にリニューアル。Suicaの上限額である2万円を超える買い物でも利用可能なコード決済機能や、家族や友人と電子マネーを送受信できる機能などを追加する。同社はこれにより、「日常も旅先も、これさえあればいい」という、ユニバーサルな決済ツールへの進化を図るとしている。 地域向けサービスや、生活に密着するサービス、訪日外国人向けサービスの提供も目指す。地域向けとしては、「ご当地Suica」(仮称)を展開し、マイナンバーカードとの連携により、地域内の生活コンテンツやサービス、商品券や給付金の受け取りや行政サービスの利用を実現。あらゆる生活シーンのDX化を可能とする。生活密着型サービスとしては、旅行時に列車の到着タイミングにあわせてタクシーが待機するようなサービスや、帰宅時に風呂が沸いているような「おもてなし」サービス、健康状態にあわせて食事をレコメンドするような「お気遣い」サービスなどを例に挙げる。訪日外国人向けには、2025年3月に、iOSで「Welcome Suica Mobile」サービスを提供。入国前のSFチャージを可能とし、シームレスに日本の鉄道を利用できる環境を整える。同サービスでは、将来的に日本のユーザー同様、ウォークスルー改札などを利用可能とする。 これらのほか、同社は他交通事業者へのSuicaサービスの提供も目指していく。センターサーバー化により、Suicaサービスを共通プラットフォームとして構築。他交通事業者のシステム導入や更新時におけるコストを抑え、ニーズに応じて利用できるようにする。 これらの内容は、JR東日本の中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」に基づくもの。今後10年間にて、Suicaの機能を順次グレードアップし、「生活のデバイス」への変革を目指す。