糖尿病を判別する「HbA1c」の見方を医師が解説 健康診断・血液検査で調べるこの数値の意味とは?
糖尿病といえば、血糖値が高くなることはなんとなく知っている人も多いでしょう。そこで、血糖を測定するもうひとつの指標である「HbA1c」について、糖尿病専門医の川名部先生(おばな内科クリニック院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
血液中のHbA1c(ヘモグロビンA1c)とは何の数値? 糖尿病の診断基準になる血糖値とHbA1cは何が違うの?
編集部: 糖尿病について教えてください。 川名部先生: 糖尿病は、高血糖(血中の糖濃度が正常値を超える状態)が持続的に続く疾患です。放っておくと進行し、全身の血管に障害が出てきます。これにより視力障害、腎臓病、神経障害、心血管疾患などのさまざまな合併症を引き起こすため、早期診断と早期の治療が必要です。 編集部: どのような基準で診断されるのですか? 川名部先生: 糖尿病の診断は、個々の病状やリスク要因などによって若干異なりますが、主に空腹時の血糖値が126mg/dL以上、もしくは食後の血糖値が200mg/dL以上だと、糖尿病と診断される確率が高いと思われます。 さらに、血中のHbA1c(ヘモグロビンA1c)が基準以上であれば「糖尿病」と診断されます。 編集部: HbA1cとはなんですか? 川名部先生: HbA1cは、赤血球が血液中でどれだけの糖(グルコース)と結合しているかを示す値です。糖尿病の診断だけでなく、すでに糖尿病と診断された方の血糖が適切にコントロールされているかを調べるための指標として用いられています。 編集部: 血糖値とは違うのですか? 川名部先生: そうですね。血糖値が、測定した時点での即時的な血糖の値であるのに対し、HbA1cは過去2~3ヶ月間の平均血糖値を示す指標として使用されます。一時的な食事や運動の影響を受けないので、長期間の血糖管理の評価に適していると言えるでしょう。
血液検査・健康診断結果のHbA1cの数値はどう見ればいい? HbA1c値が5.6だと糖尿病のリスクはある? NGSP値とJDS値とは?
編集部: HbA1cがどのくらいだと糖尿病と診断されるのですか? 川名部先生: HbA1cは通常「%」で表され、一般的には、血中のHbA1cが6.5%以上なら「糖尿病」と診断されます。 編集部: 私たちが血液検査や健康診断の結果で見るHbA1cの数値は、どう判断したら良いですか? 川名部先生: 一般的に、糖尿病でない方のHbA1cの平均範囲は約5.0%~5.7%です。これは、健康な人々の平均的な血糖コントロールを示します。この範囲内であれば、その時点では糖尿病のリスクは比較的低いと考えて良いでしょう。 編集部: HbA1cの測定値にも種類があると聞きました。 川名部先生: はい。HbA1cの測定値には、NGSPとJDSがあります。NGSP(National Glycohemoglobin Standardization Program)は、アメリカ合衆国で採用されているHbA1cの測定値で、JDS(Japan Diabetes Society)は、日本で決められた条件に従った測定値です。 日本のJDSはNGSPに比較して約0.4%低い値となっています。 編集部: 健康診断の結果などは、どう見たら良いでしょうか? 川名部先生: 以前は、JDSの基準値を採用していたのですが、日本糖尿病学会が国際標準化の基本方針を示し、海外の基準値と統一するため、2012年4月1日より、NGSPでの記載となりました。 2012年3月31日以前の検査結果と見比べる際などは計算し直す必要がありますが、ここ10年以内の検査値を見る場合は、NGSPと考えて間違いないと思います。