不登校を経験した子が通う「草潤中学校」とは?校則も制服もなし!校内どこにいてもOK!「自由というのは小さな選択の連続。それが子どもたちを元気にしている」
「これくらいでやめておこう」「まだいけそう」が自分で調整できる子に
――ここまで自由だと、はじめは子どもたちも戸惑うのではないでしょうか。 鷲見校長:そうですね。うちはいろいろなことが自由ですが、自由っていうのは、自分で決めなきゃいけないことだらけなんですよね。「今日は学校に行こうかな」「何着て行こうかな」から始まって、どの授業にどこで出るとか、誰と過ごすとか、お弁当をどこで食べるとか、本当に小さな選択をし続けるというのがうちのスタンスなんですね。これをきちんと保証してあげることが、子どもたちを元気にしているのだと思っています。 ――この学校で子どもたちに身につけてほしいことはありますか? 鷲見校長:大きくは2つあって、1つは自己調整力をつけることですね。頑張りすぎてしまう子も多いんです。ですから、「『家でチャージすれば明日ある程度は頑張れる』ぐらいのエネルギーを残して帰ってね」と伝えています。そういうことを繰り返していると、「これくらいでやめておこうかな」とか「まだ今日はいけそうだな」とか、自分でコントロールできるようになるんです。そういう力は本当に必要だと思っています。 もう1つは、ソーシャルスキルです。教室に友達がいたら「一緒にご飯食べよう」って言える子になってほしいし、みんなで話し合って何かを決めるような経験もさせてあげたいと思っています。 もともと遠慮がちな子も多くて、皆の前で自分の意見を言うというのはとてもハードルが高いのですが、それも少しずつできるようになっていると感じます。先日は来年度に向けて学校説明会を開催したのですが、何人の生徒たちが学校の中を案内をしたり、参加者からの質問に答えたりと活躍してくれました。 ――先生たちは子どもたちのことをよく見てらっしゃいますね。 鷲見校長:私たち教員は、本当にいろんなことを話して、話して…色々なことを共有しています。開校してから貫かれているのは、子どもが帰りたいと言ったら絶対そこでOKを出すなど、子どもの思いに対してきちんとそれを受け止めようということです。 ただ、「この子は、今少しだけ背中を押したら挑戦できる」っていうこともあるんですよね。そこの見極めはすごく難しいし、子どもとの信頼関係があってこそできること。教員同士でもすごくよく話し合っていますね。 ■草潤中学校とは 平成28年度末に閉校した徹明小学校の校舎を利用し、令和3年4月に岐阜市立草潤中学校として開校。中部地方で初となる公立の学びの多様化学校(旧:不登校特例校)です。 コンセプトは「学校らしくない学校」。生徒が学校の仕組みに合わせるのではなく、学校が一人一人の生徒に合わせることを目指し、「ありのままの君を受け入れる新たな形」というキャッチフレーズを掲げている。
取材・文/平丸真梨子 写真/五十嵐美弥 構成/HugKum編集部