6歳で亡くなった娘が教えてくれた”一度しかない人生”で、子どもたちとの触れ合いを通じて自立援助ホーム開所へ
思い立ったが吉日、教員を退職して子どもたちの居場所を設立
林さんが非常勤講師として勤務していたとき、当時小学2年生のある児童と出会いました。彼との出会いをきっかけに、不登校の子どもたちの居場所『にじっこ』を設立することになります。 「彼はよく『家に帰りたい』と言っていました。彼と触れ合う中で、この子が自分のやりたいことを我慢せずにできる場所を作りたいと思い『先生を辞めます!外にそういう場所を作ります』と校長先生にお伝えして、退職しました」 『にじっこ』を設立したのが2018年のこと。当時は長浜市内限定で月に1回だけ開催していたところ、口コミで参加者が増えました。現在はNPO法人『好きと生きる』を設立し、ボランティアスタッフも増え、県内7箇所で月に8回小中高生を対象に開催しています。
古民家『虹の家』でフリースクール『虹の学び舎』を開催
『にじっこ』の活動は滋賀県内での活動でしたが、林さんには長浜市内でフリースクールを開催したいという思いがありました。そんなときに偶然見つかった空き家が『虹の家』で、現在『虹の学び舎』の拠点となっています。 『虹の学び舎』は週に1回小中学生を対象に開催。朝と帰りのミーティングや登山、茶道などの体験を中心にしたチャレンジ活動などを行っています。現在は18人の子どもたちが参加しているとのこと。 林さんは自分が本当にやりたいと感じたことはすぐに実行に移します。「やりたいことをやる」は娘さんから学んだことです。ただし、常に色々なアイデアが頭の中に湧くため、その中から本当にやりたいことだけを取捨選択しているといいます。
自立援助ホームが足りない
「現在、滋賀県内には自立援助ホームが守山市、彦根市、高島市にしかありません。今春、大津市にも開設されましたが、まだ少ない状況です。そこで、長浜市で運営できる人がいないかという話になり、『長浜なら林さんがいるよ』と私を選んでいただいたようです」 林さんは、予想だにしなかったところから飛んできたボールに戸惑いを隠せませんでした。当時は自立援助ホームそのものを知らなかったため、守山市のNPO法人四つ葉のクローバーに詳しい話を聞きに行ったとのこと。 自立援助ホームとは、何らかの事情により、家庭にいられなくなり働かざるを得なくなった15歳から20歳まで(状況によって22歳まで)の子どもたちに、県からの補助を受けて暮らしの場を与える事業です。 自立援助ホームがかなりハードな事業だということは、最初からわかっていたという林さん。しかし、必要としている子どもたちの居場所がないなら、誰かが作らなければならないという使命感に駆られます。 「気がつけば『やる』って決めていました。それも、帰路の途中に…」 自立援助ホーム開所を決意したのが、2023年8月。アブラゼミの元気な声が響き渡る暑い夏の日でした。