国民に媚びるな、それは一番いけない――杉良太郎が考える、日本の未来に必要なこと
政治家は社会を背負っていく人たちの意見を聞いてあげなきゃ
杉は、政治の素人でも票を集めれば国会議員になれる現行のシステムにも苦言を呈する。 「票をたくさん獲得できる人が当選するんでしょ? じゃあ悪い人でも当選するよね。組織票があれば政治家になれるのは、私はおかしいと思う。政治家になるための国の資格制度を作るべきです。それにパスした人が候補者として出ていくといいと思う。国会は政治の素人の研修所でも学校でもない。国会議員になれば、即、国民の税金をお給料としてもらうわけだから、即戦力でなきゃダメ。選挙の前にしっかり勉強してほしい。」 選挙の前になると鳴り響く選挙カーの挨拶や、駅前の候補者の演説。杉は、そんな光景が当たり前になっていることにも異論を唱える。 「もう極論で言うと、選挙中は寝てろと。『選挙になる前に、国民のためにもうやるだけのことをやってるから、もう大丈夫だ。これ以上できないくらいやったんだ』と言えないと。それに、政治家を20年も30年も続けようとするなら、地域の子どもたちに毎月1時間、時間を取ってあげられないのかと言いたい。まだ12、3歳の子たちも、やがて選挙権を持つ。なんでまだ選挙権がないからって付き合わないの? ずっと政治家をやるんだったら、例えばもう中学生のときから一人の人間として向き合って、意見にきちんと耳を傾けてあげなさいと思いますね。スポーツ選手が、大会の1週間前になってから一生懸命練習しても、思うようにいかないのは当たり前。じゃあ政治家は? 『選挙になりましたからお願いします』って、そうはいかない。だから、ふだんから自分の地元の若い子、これから社会を背負っていく人たちの意見を聞いてあげなきゃ」
杉は、政治家に物申す一方で、常に若年層への気遣いも見せる。 「今の若い人達は将来に対して不安で当たり前だよね。今、こんな世の中にいて、不安じゃないっていうのはよっぽどの人だ。その不安を解消させてあげられるのは、大きく言えば政治家。それを変える権利をあなたは持ってるんだよ、それはあなたの一票なんだ、国に対してものを申す大事な一票だから大切にしてね、と伝えたいです」 --- 杉良太郎(すぎ・りょうたろう) 1944年兵庫県神戸市生まれ。65年に日本コロムビアより歌手デビュー。67年にNHK「文五捕物絵図」の主演で脚光を浴びる。今年、芸能活動58年、福祉活動63年を迎えた。法務省・特別矯正監、警察庁・特別防犯対策監、厚生労働省・健康行政特別参与も務める。(Interview&Text by Akimasa Munekata)