1面記事、決める会議は男性ばかり? 社会の多様性反映へ、新旧メディアの挑戦【けいざい百景】
日本は女性編集トップ0%
ロイタージャーナリズム研究所が今年発表したリポートによると、世界の主要メディアで編集・報道局長などの編集トップ(トップエディター)を務める女性の割合は、米国が最も多い43%、これに英国が40%、フィンランドが36%で続く。アジア圏は欧米に比べて性別による役割分担意識が強いと言われるが、韓国が20%なのに対し、日本は0%だった。 日本は一般企業を見ても女性役員比率が欧米より低い。上場企業全体で10.6%(23年)、東証プライム上場企業でも13.4%(23年)で、日本を除く先進7カ国(G7)平均の38.8%(22年)に遠く及ばない。メディア業界の場合はさらに低く、全国紙・地方紙は4.03%(19年度)、全国の民放テレビ局は3.0%(22年度)と、国内企業の半分にも満たない低水準だ。 メディア業界は、以前よりも長時間労働が是正されるなど職場環境は改善した。採用時点の男女比も均等化しているものの、記事の価値判断や経営方針を決めるポジションを占める女性はまだ少ないのが現状だ。
脱「男子校メディア」へ、NewsPicksの戦略
経済ニュースサイト「NewsPicks(ニューズピックス)」は、記事に女性の視点を多く取り入れることで読者層を広げる試みを行っている。自らを「エリート意識が強く、排他的な社風の『男子校メディア』」と反省し、目を背けずに改革を進めてきた。 まず、記事に対して専門家や経営者が解説コメントを加える「プロピッカー」機能で、意識的に女性の有識者を増やした。20年ごろに25%を下回っていた女性比率は、23年に平均で33%まで上昇。女性目線で解説するニュースが増えたことで、今では新規ユーザーの約半数が女性になった。 21年には、女性のキャリア形成を応援する専門プロジェクト「forWE」を立ち上げた。読者同士のコミュニティーづくりを後押しするため、オンラインやオフラインで交流イベントも計5回開催した。 こうした事業は、キャリア志向の強い女性を採用したい企業にとって人材獲得のチャンス。広告の売り上げが伸長した。同社シニアエディターの川口あいさんは、「社内から『意義ある活動』と評価されていた事業が『収益に貢献している』との見方に変わってきた」と話す。