ゴジラ70周年で最新作『-1.0』モノクロ版公開へ 米国興行収入が歴代1位 “映画活動家”が語るシリーズの思想
「生き抜かなければ」戦争を踏まえた思い
神戸:面白かったのは、まだ自衛隊もない。だから、ゴジラと戦うのは民間人。 松崎:「GHQ(連合国軍総司令部)は何をやっているんだ?」とかいろいろ批判も出てくるけれども、でもこの設定は秀逸だったと思います。 注:駐留連合国軍はソ連軍を刺激する恐れがあるとして軍事行動を避け、自前の軍隊を持たない日本は民間人だけで、ゴジラに立ち向かうことになる。(パンフレットより)
松崎:いくら何でも非現実的だろうという批判はあるんですけど、これは山崎貴監督が『永遠の0』(2013年)でけっこう批判されたんです。百田尚樹さんの原作が特攻隊賛美なので。観た方にはわかると思うけど、僕は今回、そこに対する山崎さんのアンサーも入っているなと思っていて、「無駄死にではなく、やはり生き抜かなきゃいけないんだ」みたいなところがすごく入っているなという気がしました。 神戸:特攻隊の話も出てきました。「生き残った人たちがどう生きていくか」というのが一つのテーマになっていました。
特撮出身の山崎貴監督だからこそ
松崎:山崎さんは「ゴジラを撮るために監督をやってきた」ような人だと私は思っていて、「ALWAYS 続・三丁目の夕日」(2007年)では冒頭、夢のシーンでゴジラが出てくるんです。あの時の技術だと「これまでしかできないんだ」と、山崎さんはその後東宝からゴジラシリーズのオファーが来た時に断っているんです。その後庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』(2016年)が出ちゃって、「これはやられた」「俺はどういうゴジラができるんだろう?」と思って、今回の『ゴジラ-1.0』になったと聞いています。 山崎さんは特撮畑出身の方。第1作の本多猪四郎監督は「できることなら、特撮と本編の監督は一緒の人がやった方がいい」と言っているんですよ。ただ、技術的にも、時間的にも無理だったんですけど、今回だから、ゴジラシリーズでほぼ初めてかな。本多さんが1回やったことあるんですけど。特撮部門と本編の監督が同時というのは画期的なんですよね。