ゴジラ70周年で最新作『-1.0』モノクロ版公開へ 米国興行収入が歴代1位 “映画活動家”が語るシリーズの思想
神戸:『ゴジラ-1.0』がアメリカでヒットしている、と聞きましたが。 松崎:現実的な面では、ハリウッドで俳優と脚本家の大規模なストライキがあり、その影響でめぼしい作品が少なくなっている、という事実はあります。宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』が1位になって話題になっていますけども、3位が『ゴジラ-1.0』。「え、日本のチャート?」みたいな状態が起きちゃっているんですよね。 神戸:なるほど。実写版としての歴代興行収入1位とであって、アニメはさらに上にいっている。
松崎:『ポケモン』とかありますからね。実写版の記録を持っているのが『子猫物語』というのはちょっとびっくりしましたけど。やはり世情があったみたいで、ウクライナ戦争が終わりそうもなかったり、イスラエル=ハマス戦争……戦争の空気はアメリカにはやっぱりあるわけです。ゴジラって、怪獣が日本を襲ってくるという体はあっても、基本的には反戦映画なので、その辺の空気もあったんじゃないか。また、「すごく丁寧に英語字幕を作ったのが勝因だ」という話もあるんです。戦後の日本の情勢は、アメリカ人にはわからないじゃないですか。かなりわかりやすいように字幕を作っています。ハリウッド版の『ゴジラ』シリーズで結構地ならしができていて、日本のゴジラだから抵抗感がないのもあったみたいですね。
「第1作より前」の大戦後を描く挑戦
神戸:国内実写版30作目、第1作から70周年のダブルアニバーサリー作品。東宝としても気合いが入っていたんですか。 松崎:いや、めちゃくちゃ入っています。制作費に20億円ぐらいかかっていますから。日本映画としてはものすごいスケールですよね。 神戸:戦後まもなくの闇市など、日本の戦後の時代を描いていて、すごくリアルな感じがしました。
松崎:ゴジラの第1作は1954年(昭和29年)なんですが、それに始まって、シリーズの各作は時代設定がほぼリアルタイムなんですが、今度のゴジラは第1作より前の時代設定なんですね。 神戸:まさに「-1.0」ですね。 松崎:これはかなり挑戦的なことなんです。昭和29年は、戦争の香りが残っていて、人々は戦争のことを知っていた。今回そこにあえて挑戦したのが、ものすごく大きなことだと思いますね。