ゴジラ70周年で最新作『-1.0』モノクロ版公開へ 米国興行収入が歴代1位 “映画活動家”が語るシリーズの思想
戦争の悲惨から始まった『ゴジラ』シリーズ
神戸:ゴジラは反戦の映画でもある、という話でしたが、戦争や核兵器の存在は第1作に濃厚にありましたよね。 松崎:監督した本多猪四郎さんは、世界的に有名な巨匠ですが、3度戦争で徴兵に取られて、8年ぐらい中国戦線などに行かされています。帰ってきた時には広島の焼け野原を見ているんです。戦争に対する嫌悪感とか、結局下々の者たちが犠牲になっていくのを目の当たりにしている。8年間も兵隊に取られて監督デビューが遅れたり、自分も戦争の犠牲なんです。ちょうど昭和29年には、3月に「第五福竜丸事件」があり、日本での反核機運、核兵器に対する忌避感・嫌悪が高まっている時、『ゴジラ』は始まっています。
【注:第五福竜丸事件】 1954年3月1日午前6時45分(現地時間)、米国は国連信託統治領だったマーシャル諸島ビキニ環礁で水爆「ブラボー」の実験を行った。強い放射能を帯びたサンゴ片の「死の灰」が降り注ぎ、公海上で操業中だった遠洋マグロ漁船「第五福竜丸」(静岡・焼津市)の乗組員23人が被ばく。約半年後、無線長だった久保山愛吉さん(40)が亡くなり、人類初の水爆犠牲者となった。 第五福竜丸は米国の設定した危険水域外で操業していたが、米国が水爆の威力の見積もりを誤ったため、死の灰が予想以上に広がったとされる。[時事ドットコムニュース]
松崎:2001年の金子修介監督『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』では、ゴジラは「太平洋戦争で死亡した人の怨念の集合体」という設定です。日本に埋まっている3体の成獣、バラゴンとモスラとキングギドラがゴジラを迎え撃つという話。ゴジラシリーズはシリーズごとにいろいろ設定が変わっていて、全然話がつながってなかったりするんですけども、やっぱり戦争と核兵器はどうしても避けられないもの、必ず背景にあるものになっています。 神戸:今回も、南洋の伝説的な生物「呉爾羅」が核実験で変異してしまったという設定ですね。 松崎:山崎貴監督は今回、人間の愚かさとか戦争みたいなものが生んだ「祟り神」だ、という言い方をしているんです。 神戸:「祟り神」……なるほど。それで戦争後の日本にも、再び現れてくるわけですね。 松崎:ゴジラと相対する人たちが「特攻隊崩れ」だったり、旧日本軍人でも国の無策の前にひどい目に遭って負けちゃった人たちじゃないですか。日本を守れなかった人たちが今度は「ゴジラからどうやって守るか」という話になっていくんです。