絆創膏売上3年連続トップ「ケアリーヴ」シリーズ、発売元のニチバン担当者が語る“四半世紀の挑戦”の道のり 「価格が高い」「大容量は売れない」…業界の常識を覆した戦略
現在に至るまで一貫して続けているサンプリングも、試行錯誤をしながら、認知度を上げてきた。試行錯誤が必要なのは、「絆創膏は、ケガをしないと使わない」という特性に起因する。 「絆創膏が必要になるシーンを想定しながら、実際に必要としそうな方になるべく渡る方法を考えています。たとえば過去には『登山をする方は、絆創膏があるときっと安心だろう』ということで富士山の五合目に社員が出向き、そこでサンプルを配布しました。最近では大手ファッション通販サイトとコラボし、靴にサンプルを同封した事例もあります」 ただし、実際の利用シーンを想定した場所ばかりで配っていたわけではない。若年層への認知度を上げる仕掛けとして、大手ファストフード店のおまけとして配布したこともあるという。このときは、「なぜハンバーガーを買ったら絆創膏が!?」という意外性が話題化に貢献した。
「高い絆創膏は売れない」という“業界常識”への挑戦
とはいえ、「ケアリーヴ」は既存の絆創膏と比べて値段が高いのは事実。100円ショップやコンビニなどでは、1枚あたり2円ほどで手に入る絆創膏がある中で、「Mサイズ1枚20円弱」で販売することに関して、社内でも疑問の声があがったという。 「社内でも『高い絆創膏は売れない』という見方は多く、発売にこぎつけるまでにはいくつものハードルがありました。ただ、実際に使用していただくなかで、剝がれにくさや、指や関節の動きを邪魔しないというストレスフリーなつけ心地から、『結果的にコスパがよい』として、リピートしてくださる方が増えたのかなと思います」 今やケアリーヴシリーズは、治癒促進型の「ケアリーヴ治す力」が発売年の2012年と比較して7倍以上の売上を記録するようになるなど、人気ブランドに成長した。顧客のニーズに応じて、「防水タイプ」や「超大判」なども追加し、合計で50種類以上のラインナップを展開中だが、なかには業界常識では採算をとるのは厳しいとみられた商品もあったという。 「たとえば、『やさしい素肌タイプ』Lサイズはもともと16枚入り(400円・税抜)のみの展開だったのですが、売行きが好調だったので大容量版の40枚入り(860円・税抜)を企画したところ、社内から強い反対に遭いました。他社でLサイズの大容量版を展開している例がなく、製造ラインの改造も必要なため、単純にリスクが大きかったんです。 しかし、『Lサイズのリピート率が非常に高い』というデータに加え、『大きい怪我には伸び縮みするケアリーヴの特長がマッチしている』という点から発売を決断しました。現在では、2018年から5年間で約2倍の売上を記録するほどの大ヒット商品になりました」 数々の固定観念を覆し、徹底した顧客目線で“業界No.1”に上り詰めた「ケアリーヴ」。担当者は「絆創膏は、特定の商品名で呼ばれることが多いんです。今後は『絆創膏=ケアリーヴ』と言ってもらえるようになりたいですね」と言葉に力を込めた。