25歳で安藤サクラと結婚、親子でピンク映画を鑑賞→母から言われたことは…柄本佑(38)と家族の“特殊な関係性”〈『光る君へ』最終回〉
弟・柄本時生との二人芝居
《自分に必要なのは、足元のおぼつかなさをつなぎ留めてくれるもの、地盤のようなものなのではないか。それさえあれば新たな勇気につながるのではないか。そう考えて、同じ役者の道を歩みはじめていた弟・時生と、二人芝居の舞台を始めたのは2008年のことです》(『週刊現代』2018年3月10日号) 以来、時生とは、二人のイニシャルから「ET×2」というユニット名で公演を行ってきた。10年目となる2017年には父を演出に迎え、劇作家サミュエル・ベケットによる不条理演劇の代表作『ゴドーを待ちながら』を、地元である東京・下北沢の劇場「ザ・スズナリ」で上演した。このときの稽古の様子は『柄本家のゴドー』というドキュメンタリー映画に記録されている。映画は公演が幕を開けるところで終わるが、その楽日は柄本に言わせると“地獄”だったという。
「殺すぞ」父・柄本明が自分の顔面を殴りつけ…
父はいつもなら客席の端にいて、良ければそのまま観続けてくれるのだが、その日は開演して柄本が二言三言セリフを発しただけで、すでにいなくなっていた。柄本は、幕間の休憩でダメ出しだろうなあと思いながら、それでもなお芝居を続けていたが、パッと弟の向こうを見たら、舞台袖に父が立っていた。そこでちょうど弟に「いい眺めだなあ」というセリフがあり、父のほうを見ながら言わなくてはならなかった。すでに怒り顔だった父は、そのとき「殺すぞ」とつぶやいたと、あとで弟から聞かされた。 その後もいったん舞台袖にはけるたび、ダメ出しされ、ボクシングのセコンドみたいな様相を呈していたらしい。やっと一幕目が終わって15分の休憩に入ると、父は息子たちを殴るわけにはいかないので、代わりに自分の顔面を本気で殴りつけながら「ちゃんとやってくれよ」と言ってきて、柄本を震え上がらせたとか。 これは柄本がエッセイストの阿川佐和子との対談で明かしたエピソードだが、続けて《でもちゃんと具体的にもアドバイスしてくれるんですよ。直前に自分の顔殴っときながら。そこがなんか、クールなんです。まあ後からこうやって笑い話にできるからいいですけどね。うちの劇団員全員、親父についてそういう「柄本明伝説」をいっぱい持っています(笑)》と付け加えることも忘れなかった(『週刊文春』2023年11月16日号)。