「ネット選挙」に夢はない? 投票環境をどう改善するべきか
まず「いまできる」こと
現在の投票方式の問題点として真っ先に挙げられるのは、有権者が候補者や政党の名前を自ら記入する「自書式投票」であることです。これを、印刷された候補者や政党名にマルをつけたり、チェックをする「選択式投票」にするだけで、記入ミスによって無効票となる疑問票をかなり減らせます。 無効票とは文字通り有効ではない票のことで、疑問票は記入内容がはっきりせずどの政党に投票しようとしたか判断しにくい票のことです。公職選挙法68条によって、所定の用紙を用いないものや、候補者以外の内容を記載したものなどが無効票として定められています。 先の衆院選での無効票は、小選挙区で2.68%、比例区で2.09%。票数でいうと、それぞれ約152万票、118万票となります。ちなみに小選挙区で当選した候補者の最小得票数は約6万票でした。無効票のうちの何割かが疑問票であることを考えると、決して小さくない数字であることが想像できます。 加えて、この無効票は都道府県ごとに集計され公表されていますが、その差も注目に値します。候補者名を記入する小選挙区制での無効票率が最も少ない県は山形県(1.39%)、最も多かったのは大阪府(3.6%)でした。比例では東京都が(1.43%)、高知県(3.74%)となっています。同じ仕組みの中で2倍以上の差が出ていることには何らかの原因があることも考えられます。 各地で投票の管理、開票などを行うのは基本的に選挙管理委員会です。選管は地方自治法に基いて設置され、総務省からの指導などもありますが、実際の選挙管理のやり方は各自治体の裁量に任される部分も少なくありません。例えば、投票用紙を人力で開票するか、OCRといった機械を導入するかは各地の判断となっています。 国政選挙にも関わらず、各自治体に委ねる仕組みになっていることで、投票管理の質に違いが生じている可能性も考えられます。地方自治法の成立から70年が経ち、長年の「当たり前」になっているからこそ、いま一度、選挙管理の理想形を考え直す時機かもしれません。選挙管理の問題は地方自治の建て付けに問題があることも浮かび上がらせます。