トライアウトで元ヤクルト・西田明央が見せたサブプレーヤーの矜持 2安打4出塁よりも輝いたマスク越しの献身力
【縁の下の力持ちとして貢献】 西田は長らくサブプレーヤーとしての道を歩んできたと先述したが、決して存在感がなかったという意味ではない。 打力を買われてファーストで起用されたこともあれば、代打としても19年には35回の代打起用で出塁率.314をマークしてチームに貢献。同年のオフには若手の指導や雰囲気づくりを評価されて年俸が200万円アップするなど、ムードメーカーとしての役割も担った。 そしてキャッチャーとしても、中村がケガで29試合出場にとどまった2020年には54試合でスタメンマスクを被り、チームの窮地を救ってきた。 その20年には、小川泰弘のノーヒット・ノーラン達成をキャッチャーとしてアシスト。その実績が評価され、同年9月には「燕(えん)の下の力持ち賞」を受賞。 目立たないところでチームを支えてきた西田だからこそ、舞台がトライアウトになっても急造バッテリーの相方を引き立たせることができたのだろう。 トライアウトで一番よかったポイントを問われると、西田がこう答えた。 「え~、何ですかね。シートノックで始めから声を出せたのがよかったですね。緊張というか、やっぱりお互いのことをあまり知らない選手でプレーするんで。ああやってシートノックできて、それがよかったんじゃないですか。結果どうこうってよりも」 結果的に西田は断りを入れたが、球団がスタッフとして引き留めたくなったのもうなずける。 今後は現役続行も含め、新しい道を模索することになる。だが、プロ野球選手以外の道を歩んだとしても、グラウンドでの振る舞いと同じように、西田は目配り、気配りを絶やさず相手を立てることだろう。 西田明央がトライアウトで見せたものは、チームを縁の下で支えて続けてきた男の生き様だった。
杉田純●文 text by Sugita Jun