10~20代はおせんべいを買わない? 老舗企業が“お菓子”離れを食い止めるために見出した“エンタメ性”
■美味しいもの=高カロリーでジャンクなもの? “お米”由来だからこそ提供できる価値
健康志向の高まりから、様々なカテゴリーで需要が右肩上がりしている機能性表示食品。近年、機能性表示食品を摂取したことで健康被害を訴える問題も発生したが、食品に限ってはこの問題に関するネガティブな影響はほとんどないと明かす。 「お茶などの飲み物や、お菓子類で機能をうたっているものに関しては、季節によって変動がある程度で、通常と変わらない動きを見せています。お客様としては、お菓子を選ぶときに機能性表示食品であるか否かは、そこまで気にされておらず、食品においては、機能性表示食品=ネガティブな事案には繋がらないと考えています」 同社としては、今後、より機能性表示食品に注力していくことよりも、「お客様に最も価値が伝わる形での商品開発を心がけている」という。 「お客様の需要や商品コンセプトによって、その都度どのような表現が最もお客様に価値を感じて頂けるか判断するという姿勢で臨んでおります。 同商品のように、健康機能価値があるお菓子がある一方で、米菓の中でも揚げたおせんべいやザラメのついたものは、おいしい分カロリーが高いと敬遠されがちな側面もある。ジャンクさを全面に出してその背徳感を売りに出している商品もあるが、おいしさと健康のバランスはどのように取っていくべきだろうか。 「お菓子ですので、やはりおいしさが最重要であり、“おいしくて楽しい”というのが一番コアの価値だと考えています。主成分がお米ということで、どうしても高カロリーなイメージがあると思うのですが、それと同時に、パワフルなエネルギー源、持っているタンパク質の質がいいという利点も大きいです。当社でもNICE RICEというスローガンを掲げ、お米の「いいところ・栄養価値」を伝えていく活動を通じお米の価値を皆様に改めてお伝えして参りたいと思います」
■自ら積極的に買うイメージが弱い米菓「だからこそカテゴリー成長のポテンシャルがある」
機能性表示食品も誕生し、米菓の売上自体は安定的に推移しているが、 一方で“若い世代のスナック菓子離れ”も始まっている。コンビニのホットスナックなどが盛り上がりを見せ、購買者の選択肢の幅が広がったことも要因のひとつと考えられるが、同社が行ったアンケート調査でも、若者がコンビニで手に取るお菓子はグミやチョコが中心で、スナック菓子やおせんべいの名前はなかなか上がらない現状にある。 「日頃、米菓を買わない方に調査すると、おせんべい=家にずっとあったもの、おじいちゃん、おばあちゃんの家にあったものという回答があがります。親しみもあるし、食べたこともあっておいしいイメージはあるけれど、自ら積極的に買うカテゴリーイメージが弱いのかもしれません。今後、そこがカテゴリー成長のポテンシャルであるとも言えます。」 米菓は、買い置き菓子のような感じで、家に長く置かれる作りで内容量が多いのも特徴。イベントや学生の打ち上げの際に、みんなで食べるお菓子のバリエーションのひとつとして親しまれ、おいしいイメージもある。積極的には選ばないが、受動的に関与はあるカテゴリーと言えるだろう。同社でも、「今後、10代、20代の方に、自分たち向けのお菓子があると思ってもらえるコンセプト作りは必要」と考えている。 とはいえ、米菓においてはそもそも50代、60代がメインの購買層であるため、直近の課題はいかに30代、40代を取り込むか。 「年を重ねるにつれ食べる量も減っていくので、まずはその下の世代である30~40代の方に手に取っていただく商品開発が、優先課題だと思っています」 たとえば、2021年に発売した『無限エビ』は、子どもを持つ30~40代のファミリー層を中心に、同社を代表するブランドの1つに成長。 「“無限エビ”というネーミング・“エビエビエビ”と書かれた遊び心あるパッケージ・キャラクターなど、エンタメ感が強い一方で、こだわりの原料を使っていてしっかりおいしさも追求しています。確かなおいしさと、従来の米菓にはないエンタメ感の強さも加わって、米菓売り場で楽しい気持ちで手に取っていただけたと思います」 ロングセラー商品『ハッピーターン』では、粉を増量したバージョンや、8種のスパイスをブレンドした『ハッピーターン スパイス』なども発売。『こつぶっこ ビターキャラメル風味』や、『技のこだ割り 濃厚チーズ』など、数多くの新味を展開して消費者を飽きさせない工夫を続けている。 「新商品を開発する際は、各ブランドのコンセプトやルールから外れないことが鉄則。世界観も含め、その商品シリーズのコンセプトを守りつつ、新しい味を考えています。どうせお菓子を食べるなら、おせんべいの方が身体にもいいし、何よりおいしいと選択肢のひとつとして選んでいただけるように、お米の価値をしっかり訴求していきたいと思っています。お米だからこそできることを、お菓子を通じてこれからもお届けしていきたいです」 (取材・文/辻内史佳)