寄付や逮捕でたびたび注目、サウジアラビアの王子はいったい何人いるの?
産油国でたいへん豊かな国というイメージのサウジアラビア。同国の王子が寄付をした、逮捕されたなどというニュースもたびたび耳にする。しかし王子はどうやら一人や二人ではなく、それどころかもっとたくさんいそう。そもそも王子はいったい何人いるのか、王室はどんな仕組みになっているのか、同国の事情に詳しい一般財団法人日本エネルギー経済研究所研究理事・中東研究センター副センター長の保坂修司さんに解説してもらった。
活動的なサウジアラビアの王族たち 犯罪者から首相まで
先日、サウジアラビアの王子を含む何人かのサウジ人が、麻薬密輸容疑でベイルートの空港で拘束されたとの報道があった。サウジアラビアの王族というと、日本のメディアで紹介されるのは、だいたいスキャンダルか、金持ちエピソードであろう。 同じ君主制の国として、日本やヨーロッパの皇室・王室とも比較されるが、後者が基本的に政治とは一線を画す象徴的な存在なのに対し、サウジアラビアの王族(サウード家)は君臨するし、統治もする存在であり、さらにいえば、経営もする。サウジアラビアでは、国王は同時に首相でもあり、内相や国防相など、治安や軍事に関わる要職は基本的に王族が占めている。
サウード家の成り立ち
サウジアラビアという国名は、もともと「サウード家のアラビア王国」を意味しており、国家そのものとサウード家との強い結びつきを示している。歴史的にみると、サウード家は18世紀半ばから正しいイスラームを広めるという大義をもって、アラビア半島を征服していった。 これが俗にワッハーブ派と呼ばれる教えだが、今でもサウード家は、その大義を統治の正当性の根拠としており、厳密にいえば、イスラームの教えに反することは絶対してはいけないことになっているはずだ(もちろん世の中そう単純ではないが)。 サウジアラビアがほぼ現在のかたちになったのは1932年であり、当時の国王アブドゥルアジーズが建国の父となる。サウジアラビアで一般に王子と呼ばれるのは、このアブドゥルアジーズの子孫である(ただし、いくつか傍流王族がおり、彼らも王族に含まれる)。