人身事故が多発、JR総武線・新小岩駅がようやくホームドア設置へ
2011年以降、今年1月までに38件もの人身事故が発生しているJR総武線の新小岩駅(東京都葛飾区)で、ホームドアの設置工事が始まる。意見書を国などに提出していた地元の念願がようやくかなう。
新小岩駅は1926年に信号所として開業
新小岩駅は東京駅から千葉方面に約10キロ、城東の葛飾区に位置する快速停車駅だ。ホームは各駅停車と快速の2面4線で1日の乗車人員は7万4,135人(2015年)。1926(大正15)年に新小岩信号所として開業以来、歴史は長い。1956年には北口駅前付近で「新小岩駅前米軍機墜落事故」が発生している。 そのごく小さな北口と、1959年に設置されたアーケードやバスのロータリーで栄える南口とは趣を異にし、改札を通らずには行き来できない。隣の小岩駅が快速停車駅ではないのに、70年代には自由に南北の行き来ができる現代的な駅舎となりバリアフリー化もされたのと比べ、新小岩駅は旧態依然としている。
発端は2011年
そんな地味な駅が「事故が多発する駅」として全国的に有名になった。発端は2011年7月12日に発生した悲惨な事故。時速約120kmで快速ホームを通過する成田エクスプレス10号に40代女性が転落、事故の衝撃でホームと売店内にいた男女4人が巻き添えとなって負傷した。 そして翌日午後にも同じ快速ホームで50~60代男性の事故があった。連日の事故は衝撃的に報じられ、同じ7月の25日に3度目の事故が起きた。結局、同年内に8件もの人身事故が起き、昨年まで実に35件が発生、年が明けてからも1月にすでに3件起きている。
大げさな報道と利用者への迷惑
興味本位の報道にも一因があるというのは現役の駅員。「線路が直線的で長いとか、急行がトップスピードで通過するとか、いろんな理由をつける人がいるけど、事故が頻発する駅や沿線は他にもある。首都圏のどこかで、一日一件は事故が起きるんです」。大げさに書きたてれば、新たな事故を誘発するということだ。 事故は利用者にも大きな迷惑をかける。「事故が当該(自分の駅)で起きたかどうかでやることも変わってくる。当該でなければ乗客の案内に集中できるけど、駅によっては他の路線やバスに逃がせない。目的地にたどり着けない人々は行き場のない怒りをもろに駅員にぶつけてくる。しょうがないとは思うし、いたたまれない」 “当該”であれば、現場の事故処理がある。鉄道会社によっても違うが、2001年にJR山手線で発生した新大久保の事故(線路に転落した泥酔男性を救助しようとした日本人と韓国人留学生が電車にはねられ、3人とも死亡)あたりから規則が大幅に変わったという。 「今は駅の係員はなるべく事故現場に出さない。乗務員は乗務員室を離れてはならないし、許可なく線路に降りることもできない。救出現場に向かうのは、管轄の消防署から派遣されるレスキュー隊や警察。駅員は運転士の話や現場の状況を整合し、運転再開までかかる時間を目算します」。