QualcommのSnapdragonはどこへ向かうのか 鍵を握る「車載システム」への領域拡大
インフォテインメント(IVI)からADASによる運転制御への進出
このように、2024年のSnapdragon Summitでは車載コンピューティングが大きなテーマとして扱われ、全セッションの半分程度はこの話題が占めていたほどだ。前述の通り、Qualcommは現在IoTと並んで車載コンピューティングを成長中の重点テーマの1つとして扱っており、11月19日(米国時間)に開催された「Investor Day 2024: IoT and Automotive Diversification Update」中で、Amon氏は今後450億ドル規模のプロジェクトのパイプラインが進行中と述べている。 加えて、全体の3分の1程度が「ADAS(先進運転支援システム)」に付随するものだという。いわゆるレベル3以上の自動運転の世界では必須の仕組みだが、センサーで周囲の状況を素早く判断し、ドライバーに必要な情報を通知、あるいはドライバーに代わって自身が運転の代行や補助を行う。 もともとQualcommをはじめとするIT業界のベンダー各社はカーナビやメディア再生を含むスマートフォン連携の世界から車載システムへと入り込んでおり、それがApple CarPlayやGoogle Autoなどの取り組みにつながっている。いわゆる「インフォテインメント(Infotainment)」だが、あくまで車の制御系とは別のカテゴリーであり、オプション的な性格の強いものだった。 Amon氏がいうように、ADAS込みで3分の1の割合を占め始めたということは、それだけ本命である車の制御部分(DCU:Domain Control Unit)に足掛かりを得つつあることを意味する。いわく、自動車メーカーに連なる全てのOEMと何らかのパートナーシップを同社は結んでいるといい、裏方として表には出ないものの、今後インフォテインメントを含むADAS搭載車の世界ではQualcommの製品が使われている可能性が高いということだ。 イベントのステージでは欧米や中国のLi Auto(理想汽車)の事例などが中心に紹介されていたが、実際には日本のOEMメーカーとも密に連携しており、水面下でリリースに向けた準備が進んでいる。米Qualcomm Technologies製品マネジメント担当シニアディレクターのMark Granger氏によれば、スマートフォン時代からのパートナーであるソニーの例を挙げている。同社はホンダと共同でソニー・ホンダモビリティを設立しており、「AFEELA」ブランドでプロトタイプのデモンストレーションを行っている。 Granger氏はホンダがQualcommの持つ車載向けのCockpitソリューションの最初の顧客の1社であり、現在第3世代または第4世代のCockpitソリューションの開発を進めていると説明する。ベースがホンダとの協業で開発が進む中、コンシューマーに強みを持つソニーの体験が加わることで、2025年に何かしらの発表ができると述べている。実際、ソニー・ホンダモビリティは2025年1月に米ネバダ州ラスベガスで開催されるCESへの出展を発表しており、恐らくここで最新モデルのお披露目が行われることになるのではないかと考える。