小惑星「2024 PT5」2024年9月末から2か月限定で “第2の月” になると判明
■観測史上5番目の “第2の月” 「2024 PT5」を発見
Carlos de la Fuente Marcos氏とRaúl de la Fuente Marcos氏の研究チームは、最近発見された小惑星「2024 PT5」に注目し、解析結果をアメリカ天文学会の研究ノート(査読なし)に投稿しました。2024 PT5は2024年8月7日に「小惑星地球衝突最終警報システム (ATLAS)」で発見された、直径約10mと推定される小惑星です。地球とかなり似た公転軌道を持っており、地球に接近する際には1km/sを下回る、かなり遅い相対速度となります。2024 PT5は、このような地球と似た公転軌道を持つ小惑星のグループ「アルジュナ群」に分類されました。 研究者は、2024 PT5の公転軌道のデータに基づき、地球や月の重力の影響を受け、どのような軌道へと変化するのかをシミュレーションしました。その結果、2024 PT5は地球接近時の重力で軌道が変更され、2024年9月29日20時2分(日本時間30日5時2分)から同年11月25日10時33分(日本時間同日19時33分)まで地球の周回軌道に入ることが分かりました。つまりこの約2か月間、2024 PT5は地球の “第2の月” となります。これは観測史上5例目となります。また、2024 PT5は “第2の月” になる前に発見及び予測されていますが、これは観測史上初めてのことです。 周回状態となっている期間が短いため、2024 PT5は地球の周りを1周する前に地球周回軌道を離脱します。このため2024 PT5は3例目の一時的に捕獲されたフライバイ天体に分類されます。特に、地球の周回軌道となる前後も含め、その公転軌道は前回の例である2022 NX1とそっくりです。このことから研究者は、2024 PT5は人工物である可能性は低いと考えています。 “第2の月” である期間中、2024 PT5は地球と月との距離の約10倍(350~400万km)の距離にあります。直径約10mと小さいため、地上からの視等級は22等級と、残念ながら肉眼はおろか、大型の望遠鏡でないと見ることは不可能です。 “第2の月” となりうる小惑星は、地球周回軌道を離脱した後も、数十年後に再び地球に捕獲される可能性があります。2024 PT5の場合、次回は2055年になると予測されています。 Source Carlos de la Fuente Marcos & Raúl de la Fuente Marcos. “A Two-month Mini-moon: 2024 PT5 Captured by Earth from September to November”.(Research Notes of the AAS) Minor Planet Electronic Circular. “MPEC 2024-P170 : 2024 PT5”.(Minor Planet Center) Kelly Kizer Whitt. “Earth to get an asteroid mini-moon for 2 months”. (EarthSky) “Tony Dunn氏のX(旧Twitter)”. Mikael Granvik, Jeremie Vaubaillon & Robert Jedicke. “The population of natural Earth satellites”.(Icarus) R. de la Fuente Marcos, et al. “Mini-moons from horseshoes: A physical characterization of 2022 NX1 with OSIRIS at the 10.4 m Gran Telescopio Canarias”.(Astronomy & Astrophysics)
彩恵りり / sorae編集部