能登半島地震被災地で高まる感染症や心の不調リスク 災害関連死の防止へ学会や大学が情報提供
石川県能登半島で元日に発生した大地震の被災地では11日も懸命の救助、支援活動が続けられた。同県によると同日午後2時現在で213人の方が亡くなり、避難生活の長期化が懸念される中で災害関連死も出始めた。多くの被災者が身を寄せる避難所からはノロウイルスなどの消化器感染症患者の報告が厚生労働省に届くなど、感染症リスクが高まっている。また、長引く避難生活による心の不調に対するケアの重要性も指摘されている。
地震や津波による直接的な死は免れたにもかかわらず、その後の厳しい避難生活などで命を落としてしまうのが災害関連死で、東日本大震災や熊本地震でも多く出た。 地震発生から10日以上経っても変わらない能登半島地震の被災地の厳しい状況。「何とか被災者の体調不良を減らし、今から起こりうる死を一人でも防ぎたい」。そう願いながら関連学会や大学・研究機関、関係省庁などが相次いでホームページで心身の健康悪化を防ぐために注意すべき情報などを提供している。
避難所で広がりやすい感染症
武見敬三厚生労働相は9日の閣議後会見で、避難所などでノロウイルスなどの消化器感染症の患者が約30人いるとの報告があると明らかにし、「専門家とも連携しながら避難所の衛生対策、感染症対策を強化する」と述べた。ノロウイルスは冬に流行しやすく、手の指や食品を通じて感染し、嘔吐(おうと)や下痢、腹痛を起こす。子どもや高齢者は、重症化し、死亡する場合もある。 国立感染症研究所は、被災地で広がりやすい感染症のリストを公表し、注意を呼びかけている。避難所などではインフルエンザなどの急性呼吸器感染症や、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎・急性下痢症、咽頭結膜熱のリスクが、また野外の救援活動やボランティア活動では破傷風やレジオネラ症、創傷関連皮膚・軟部組織感染症のリスクがそれぞれ高いとしている。
感染症対策の基本は手洗いだが、多くの避難所ではトイレの水が流れないなど衛生面での不備が指摘されている。ノロウイルス感染の予防も容易ではなく、感染症予防のためにも避難所の環境改善のための支援が待たれる。東北大学災害科学国際研究所は、水が足りない環境ではノロウイルスには効かないものの、アルコール消毒やほこりを吸わないためにマスクやゴーグルの着用を勧めている。 同研究所の江川新一教授(災害医療国際協力学分野)は「避難所では体温が低下する低体温症の危険が高まる。栄養のある温かい食事のほか、毛布などですきま風から身を守る必要があり、段ボールを使ったベッドも有効だ」とアドバイスしている。