能登半島地震被災地で高まる感染症や心の不調リスク 災害関連死の防止へ学会や大学が情報提供
厚生労働省もホームページでは「被災者の皆様へ」と題し、「健康・医療」の項目で「避難所等での感染症対策」「被災した家屋での感染症対策」「避難所でのアレルギー対応」などの各項目で情報提供し、「保険証がなくても医療機関を受診できる」などと説明している。避難所では狭い空間で長い間運動不足になりがちで、日本循環器学会は「エコノミークラス症候群」や「ストレスによる心臓病」(たこつぼ型心筋症)に対する注意を呼びかけ、日本感染症学会も「お見舞い」のメッセージとともに「災害と感染症対策」などの資料を提供している。
心の不調支援は長期態勢で
避難生活が長引くと心配されるのが心の不調だ。東日本大震災の時は、被災直後の感情が高ぶった時期が過ぎ、むしろ少し落ち着いてきた時に心身の不調が出やすい、と指摘された。抑うつ症状のほか、地震の体験が突然思い出されて眠ることができなくなるなどの「心的外傷後ストレス反応」(PTSR)や、これが重症化して生活に支障がでる「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)がある。同大震災では子どもの心の不調に対するケアの重要性が指摘された。
筑波大学の災害・地域精神医学講座はホームページで、「ジャパン・ディザスター・グリーフ・サポート(JDGS)」プロジェクトの「災害で大切な人をなくされた方を支援するためのウェブサイト」を紹介。かけがえのない人を亡くした人の心情に思いを寄せて「怒りや罪責感は理不尽な出来事が起こった時に生じるとても自然な反応です」などと記している。
日本トラウマティック・ストレス学会も「一日も早く皆様が安心して生活できる日が取り戻されることをこころよりお祈り申し上げます」などとするメッセージとともに、「被災者と支援者のための資料集」として「子どもの心のケア」「危機後の子どものストレスに対処するために」などのサイトを紹介している。 東北大学災害科学国際研究所の國井泰人准教授(災害精神医学分野)によると、大災害によるメンタルヘルスへの影響、心の不調の問題は災害直後の急性期を過ぎると日常のストレスに加え過度の災害ストレスの負荷がかかる。不眠や不安はごく普通の反応だが、うつ状態になりやすく、最悪の場合は自殺に至る。こうした心の不調は数年以上続く場合が多く、長期的支援の重要性を強調している。