COP28、「化石燃料からの脱却」で合意 各国は危機感共有し、一層の排出量削減を
各国が掲げている削減数値を基にすると、世界の排出量は30年時点で520億トン、35年時点で510億トンになると予測。このままではパリ協定の「1.5度目標」が達成できる可能性が低く、達成確率は「楽観的シナリオでも14%しかない」と推計した。各国の現在の対策では今世紀末までに気温上昇が2.5~2.9度、今後の対策の遅れによっては3度を超えてしまう可能性もあるという。
UNEPのアンダーセン事務局長は報告書の中で「強烈な気候変動の影響を見るにつけ、現在各国が出している削減目標(による気温上昇予測の結果)は望ましくない。世界は不十分な行動の溝から脱して排出量削減などで新たな記録を打ち立てなくてはならない」と訴えている。
脱炭素社会への転換に猶予ないことを共有
COP28は、気象災害が続発して世界中がかつてない異常気象を実感した一方、ロシアのウクライナ侵攻に始まった両国の戦争に加えてパレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘も激化し、世界の各国間の分断が深まる中で開かれた。
温室効果ガスは国境を超えて地球上の大気に広がる。気候変動対策は国際社会が一丸とならないと効果を発揮しないが、最近の厳しい国際情勢はCOPの場にも影響した。会議参加者によると、首脳級会合でヨルダンのアブドラ国王は「戦争による破壊で気候変動の悪影響は増大する」と警告したという。演説を予定していたイスラエルのヘルツォグ大統領は登壇しなかった。バイデン米大統領は会議出席を見送っている。
会議後半はこうした最近の緊迫した国際情勢が影を落とした上に、これまでのCOP同様、先進国と発展途上国の対立構図が色濃く出た。しかし、世界の気候変動の激化に歯止めがかからず、深刻な危機が顕在化している現実がある。多くの参加国は各国の当面の利害に縛られながらも脱炭素社会への転換に猶予がないとの認識を共有し、何とか合意に至った。UAEのスルタン・ジャベル議長は成果文書採択の直後、「みんなで取り組むことが会議の核心だった。困難な日々の中で私たちは成長した」と述べている。