過去最高の利益、原価率は減少…山崎製パンの値上げへの疑問 必要以上に消費者に負担を強いるものなのか、同社は「やむを得ず値上げをさせていただいた」と回答
袋代の増加額に対して大きすぎる値上げ幅
そうした事情を踏まえて、山パンが挙げる値上げ理由を見ると、納得のいかない点がいくつかある。 まずは、「包装資材」の高騰についてだ。 パンの袋には、主にポリプロピレンというプラスチックの一種が使われる。 例えば、ポリプロピレンを製造する大手化学メーカーの東洋紡は、昨年12月と今年2月に値上げを行った。その上げ幅は、2回の合計で500平米あたり550円。それまでは約5000円で販売していたので、約10%の値上げをしたことになる。 しかし、パンの値段に占める袋代は小さい。食パン1斤の袋の面積を約46cm×約34cmで約1564平方センチメートルとすると、1枚あたり約1.5円。これが10%値上がりしたとしても、影響額は0.15円である。 たとえば、『ロイヤルブレッド』(6枚切)の販売価格は189円(本誌・女性セブン調べ)。5%の値上げは約9円増。袋代の増加額に対して、値上げ幅が大きすぎるのではないか。 次に、物流費に関してはたしかに、トラックドライバーが不足し、配送料が高騰しているという「2024年問題」がよく報道されている。しかし、山パンの場合は自社のトラックでパンを輸送しており、必要なドライバーは確保されているので、影響は他社よりも小さいと考えられる。 軽微なコスト増を理由にした、いわゆる「便乗値上げ」をしているのではないかという疑念が浮かぶ。 値上げの正体を検証するためには、商品を作るために必要な費用である「原価」が重要になる。 パンの原価とは何か。食パンの製造工程を例に考えてみよう。 工場では、まず仕入れた小麦粉に食塩やバターなどを混ぜてパン生地を作る。完成したパン生地は、成形工程、焼き上げの工程に入る。その後、裁断、袋詰めされて商品として完成。配送トラックに積まれ、販売店や小売店に送られる。 それらの工程で投入される小麦粉などの材料のほか、包装材は「原材料費」と呼ばれる。工場で働く人の人件費は「労務費」で、工場を動かすための光熱費や機械設備投資にかかった費用などは「経費」だ。その3つの費用をまとめて「原価」という。 山パンは、2013年度まで原価の内訳を公表していた。それによると、売上高に対する割合は原材料費41%、労務費15%、経費10%で、合計すると約66%となる。 さらに、パンの運搬費や広告費、工場以外の人件費などは「販売費及び一般管理費」(販管費)としてまとめられる。これらを売り上げから差し引いたものが、山パンが得る利益だ。
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