地方の実家・不要な山林を相続してしまい、絶望…「相続土地国庫帰属制度」で「不要な土地を手放す」ことは可能か?【司法書士が解説】
近年では、空き家となった故郷の実家や、遠方の山林・農地など、活用できないのに管理の手間や固定資産税がかかる、いわゆる〈負動産〉を相続して頭を抱える人が増えています。そのため国は不要な土地を手放せる「相続土地国庫帰属制度」を創設しましたが、制度の使い勝手はいいとはいえないようです。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
「いらない財産だけ相続放棄」は認められない
筆者の事務所にも「親から不要な土地を相続してしまい、非常に困っている」「不要な土地をどうにかして手放したいが、方法はあるのか?」といった相談が多く寄せられています。 遺産相続する場合、仮に財産のなかに不要なものがあったとしても「不要なものを含め、すべての財産を相続する」もしくは「すべて放棄する」の2択しかなく、「ほしいものだけを相続し、不要なものは放棄する」ことはできません。 しかし、山や畑など、不要かつ売却困難な土地を相続してしまうと、利用できない土地のために固定資産税だけがかかってくる、という困った状況になってしまいます。 問題はそれだけではなく、不要な土地を放置することで荒れ放題となり、生い茂る雑草や樹木の枝の侵入等でクレームが入ることもあります。土地だけでなく、その上に老朽化した建物がある場合は、近年ますます激しくなる台風や豪雨等により、屋根瓦の飛散や建物自体の倒壊などが起こり、周囲に甚大な被害を及ぼしてしまうかもしれません。 そのため、面倒ごとから逃げるべく「いらない土地の登記をしない」という選択肢をとる人が多発したのですが、その結果、日本中で所有者不明土地が大発生するという、由々しき事態となってしまったのです。 登記がなされないと、土地を収用することも、固定資産税を徴収することもできません。このままでは国土が立ちゆかなくなると判断した国は、所有者不明土地問題を解決すべく、2024年4月から相続登記を義務化。未登記の場合は10万円以下の過料を科すことになりました。
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