地方の実家・不要な山林を相続してしまい、絶望…「相続土地国庫帰属制度」で「不要な土地を手放す」ことは可能か?【司法書士が解説】
不要な土地、国に引き取ってもらうには「厳しすぎる条件」が…
とはいえ、いくら登記が義務化されたところで、不要な土地は不要な土地です。これをどうにかして処分ができないか…ということで、2023年4月、相続登記義務化と併せて創設されたのが「相続土地国庫帰属制度」です。 この「相続土地国庫帰属制度」は、国が定めるルールに従い負担金を支払うことで、国に不要な土地を引き取ってもらえる制度です。申請から承認まで約半年~1年程度かかるとされており、承認が下りてから負担金を納付することで国に土地が帰属する、という流れになっています。 しかし、一見画期的に思える制度ですが、どんな土地でも引き取りOKではありません。 国に引き取ってもらうためにはかなり厳しく設定されているのです。 条件としては、主に下記の6つがあげられます。 (1)土地の上に建物がない (2)境界が明確である(山林などは厳しい) (3)土壌汚染がない (4)通路や水路などではない (5)担保権や使用権がない (6)管理が難しくない(山林などは厳しい) もし土地の上に建物がある場合は、解体・撤去してから申請する必要があります。また、担保権や使用権といった地役権の承役地になっていたり、第三者の利用があったりする場合は、申請を行うことはできません。 そのほか「管理が難しくない」という表現は非常に抽象的なのですが、坂や高い崖がある場合は承認が下りない可能性があるため、事前に確認する必要があります。 もし条件を満たして承認が下りても、その後は負担金や審査手数料を納める必要があります。 負担金として12ヵ月分の管理費を払うほか、審査手数料として土地一筆あたり1万4,000円がかかってきます。とくに山林などは筆数が多くなりやすく、かなりの金額になる可能性もあります。 とはいえ、承認され、30日以内に負担金を収めることで、所有権は国へと移転します。 なお、負担金の金額は地目によって異なります。 宅地:20万円 田畑:20万円 森林:面積に応じて算定 その他(雑種・原野):20万円 所有権の移転に際した登記などは国が行うため、ご自身が手続きする必要はありませんが、上述の通り、相続土地国庫帰属制度の利用というのはなかなか高いハードルがあります。 むしろ、国に引き取ってもらえる条件の土地なら、有償での売却が可能ではないかといわれるほど、基準が厳しいといわれているのです。
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