【毎日書評】安さだけじゃないサイゼリヤ、当たり前の品質をどこでも提供できる秘策
サイゼリヤは「イタリアンは高い」という従来のイメージをことごとく覆してきました。みんなが平等に食べられるようにしようというのが、サイゼリヤの創業者である正垣泰彦会長の思いだったからです。 それもあって、サイゼリヤでは、1000円もあれば、いろいろなメニューを楽しめるようになっています。(「プロローグ サイゼリヤはなぜ定期的に『炎上』するのか」より) 『サイゼリヤ元社長が教える 年間客数2億人の経営術』(堀埜一成 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)冒頭のこうした記述を確認するまでもなく、サイゼリヤの低価格路線は有名。しかし、ただ安いだけではなく、他にもいろいろな秘密があるようです。たとえば、マーケティング的なことをほとんどやっておらず、広告すら出していないこともそのひとつ。 広告費を売上の5~8%かけるのがチェーンストアの相場とされているのですが、サイゼリヤにはそれがない。サイゼリヤといえば「安いレストランの代名詞」で、お店で出している価格そのものが広告になっているからです。 広告を出さずに浮いた分のお金は、原価に組み込まれています。つまり、原価率を他社より5~8%高くしても問題ないということです。広告に回すお金があったら、少しでもいい食材を使って、お客さまに還元する。価格と商品力でお客さまに訴求していくという考え方がベースにあります。(「プロローグ サイゼリヤはなぜ定期的に『炎上』するのか」より) もちろん他にも「サイゼリヤらしさ」は少なくないのですが、だからこそ同社の成長戦略を知ることには意味があるわけです。つまり、そこに本書の価値があると考えることができるのではないでしょうか? ちなみに著者は、味の素を経てサイゼリヤに入社し、その9年後には代表取締役社長となった人物。2022年に退任するまでサイゼリヤ急成長の基盤づくりなどさまざまな実績を積み上げてきたことで知られています。 きょうは、そうした経験を軸とした本書の第4章「サイゼリヤ流『負けない戦略』のなかから、興味深いトピックスを抜き出してみたいと思います。