「強盗が怖くなったがやめたいと言えず」“ルフィ事件”安易に闇バイトに応募した26歳の実行役に待っていた結末とは【#司法記者の傍聴メモ】
■加藤被告「金は裏切らない。金だけを信じてきた」
裁判では、加藤被告の生い立ちについても明かされた。 加藤被告「中学2年の時に親が離婚し、父親に引き取られた。父親は自分の意見に沿わないと機嫌が悪くなり、自分が敷いたレールに乗っかって生きればいいという考えだった」 幼少期の頃は「父親の言うことを聞かないと、風呂に沈められたり、包丁で手の甲を切られたりしたこともあった」と話した。 18歳で仕事を始めたあと知り合った女性との間に子どもが生まれ、一時は幸せな生活を送っていた。しかし、ケンカが絶えなかったことなどから家を追い出されたという。 また、人間関係に苦労し、仕事も続かなかったと話した。 加藤被告「同僚に馴染(なじ)めず、ぎくしゃくしてしまうことがあった。僕も“コミュ障”なところがあり、どうしてもその場からいなくなりたいとなった」 職を転々としたが、金遣いは荒かった。母親のクレジットカードで約300万円を使い込み、ブランド品の購入などにあてたこともあったという。 加藤被告「自分に自信をつけたかった。小さい時から劣等感が強くて、着飾ることで価値を見出すというか、ブランド品を身に着けて『俺ってすごいだろ』と周りに思われたかった」 弁護士から、逮捕されるまでどんな苦労があったか問われると、加藤被告はこう話した。 加藤被告「お金ですかね、やっぱり。あとは居場所です」「お金は裏切らない。金だけを信じてきた。人間不信は今も継続しています」 最終意見陳述では、用意していたノートを持って証言台の前に立ち、「結果として強盗致死になってしまったことを深く受け止め、反省している。被害者、遺族の方にどんな償いができるか考え、それを実行し、今後は真面目に生きていきたい」と述べた。
■「強い金銭的欲望に基づき、主体的、積極的に役割を担った」判決は
12月16日、加藤被告は無期懲役の判決を言い渡された。東京地裁立川支部は判決で、加藤被告が奪った時計の利益を実行役のリーダーと山分けしようとしていたことなどに触れ、「強い金銭的欲望に基づき、主体的、積極的に役割を担いながら、自己の利益を増やそうとしていた」と指摘。「指示役を恐れていた可能性は否定できないが、加藤被告の行動からすれば、脅されてやむなく参加していたというのは実態に即していない」とした。そのうえで、「犯情は非常に悪く、その責任は実行役のリーダーに次ぐもので重大。直接的には生命・身体に対する重大な被害結果を生じさせていないからといって、この点を殊更重視することはできない」と厳しく非難した。 加藤被告は真っすぐ前を向いたまま、ぼう然とした様子で判決を聞いていた。 (社会部司法クラブ記者・宇野佑一) ◇ ◇ ◇ 【司法記者の傍聴メモ】法廷で語られる当事者の悲しみや怒り、そして後悔……。傍聴席で書き留めた取材ノートの言葉から裁判の背景にある社会の「いま」を見つめ、よりよい未来への「きっかけ」になる、事件の教訓を伝えます。