「強盗が怖くなったがやめたいと言えず」“ルフィ事件”安易に闇バイトに応募した26歳の実行役に待っていた結末とは【#司法記者の傍聴メモ】
■「時計さばける?」狛江事件で奪った高級腕時計を…
広島の事件から約1か月後。東京・狛江市での強盗計画に参加することを決めた加藤被告。 加藤被告「家には確実に現金はあるんですか」 指示役「Kim」「ありますよ」 加藤被告「寒い結果にならないように祈っています」 “犯罪だけして何も得られないのが一番嫌だ”と考え、指示役「Kim」にメッセージを送り“確実に現金があるのか”事前に確認したという。 そして、犯行当日の2023年1月19日。宅配業者を装った他の実行役が住宅に押し入ると、加藤被告も続いた。加藤被告は「金のありかはどこや」などと住人の当時90歳の女性を問い詰めて体を小突くように1回蹴ったり、外に声が聞こえないように女性を住宅の地下室に連れて行ったりした。その後は、女性を他の実行役に任せて住宅の中で金品を物色。見つけた腕時計3個を持ち出したという。現場から逃走した後、仲間の1人にある計画を持ちかけた。 加藤被告「時計さばける?」「2階にあったんだよね」 実行役のリーダーだけに腕時計を奪ったことを話し、他の実行役や指示役を出し抜いて、多くの利益を得ようとしていた。 この事件では、住人の女性が両手を結束バンドで縛られたまま、別の実行役からバールで約10回殴られた末、亡くなった。加藤被告は翌日にも足立区の住宅で窃盗未遂事件を起こし、翌2月に逮捕された。
■「誘いをスルー」したら指示役から電話が…
1人の命が奪われ、3人がケガをさせられた、3つの事件に関わった加藤被告。途中で犯行を思いとどまることはなかったのか。 実は加藤被告は、広島で強盗事件を起こした後、「Kim」から千葉県のリサイクルショップに強盗に入る計画に誘われていたが、ある理由から参加しなかったのだという。 加藤被告「広島事件のニュースを見て、被害者が意識不明の重体になっていると知った。それで強盗をするのが怖くなったが、やめたいとは言えず、誘いを無言でスルーした」 テレグラムのグループトークに送られてきた「Kim」のメッセージを無視したという。さらに、狛江事件の約1週間前にも、「Kim」から「今後タタキ(=強盗)やる人、やらない人を知りたい」と再びグループトークにメッセージが送られてきたが、この時も同じ理由で明確な返事をしなかった。 では、なぜ狛江事件に参加したのか。誘いを無視していると「Kim」から電話がかかってきたという。 指示役「Kim」「(狛江市の強盗計画で)人数が足りないから行ってくれないか」 参加することをためらっていた加藤被告。すると、こう脅されたという。 指示役「Kim」「最悪、人をさらうことも容易だ」 最初に「Kim」から闇バイトを紹介してもらう際、「個人情報を教えないと仕事をさせられない」と言われ、実家の住所などを伝えていた。 加藤被告「当時Kimさんがどんな人かわからなかったが、別の組織をつかって何らかの方法で人をさらうんだと思った。自分もそうだし、実家の住所を教えていたので家族も被害をうけるかもしれないと怖くなり、狛江事件に参加した」 しかし、狛江事件を起こした翌日にも、犯行を続けた加藤被告。実行役のリーダーから「金とれなかったから明日も行くよな」と言われ、断ることができなかったと弁解した。 加藤被告「狛江事件で人が亡くなってしまった現実から、行くところまで行ってしまったと思い、後にひけなかった。怖くて行きたくなかったが、断れないし、Kimさんに脅されているし、色々な事がごちゃごちゃになっていた」