出発 2024年ベストショット3選【今井暖】
早朝から夕暮れまで神経を研ぎ澄ませ、一瞬を切り取ることに全てをかけるフォトグラファーたち。2024年シーズンも、ドラマが凝縮された数々の一枚がゴルフ界を彩った。GDOとともに国内外を渡り歩いたプロフェッショナルが選んだ今年の3枚。第5回は今井暖カメラマン編。 【画像】<2023年>今井暖カメラマン ベストショット3選
出発 <全英オープン>
出発前から当たる確率が高そうな天気予報サイトを検索して、スコットランド・トゥルーンの週間天気を見ることがここ1カ月の日課となった。出発が近づくにつれて予報が固まってくるのが普通なのだが、毎日のように4日間の予報がコロコロ変わる。一日の中にも四季があると言われるほど、ここスコットランドの天気は変わりやすいのだろう。 練習日から雨が降ったりやんだり、風もこの時期のスコットランドらしくクラブ選択に影響を及ぼすほどの、いかにも「全英オープン」という天気が続いた。迎えたムービングデーは、予選ラウンドに吹いていた強風がおさまり、朝から陽が差すほどの好天。期待していなかった分、足取りも軽くコースに飛び出して行ったのだが、用心深く防寒肌着を着込んでしまった僕は、プレーヤーでもないのにひとり大汗をかく始末。天気予報サイトを恨んだ。 ところが、優勝争いの中心である午後組がスタートする頃に雲行きは怪しくなり、しばらくするとすっかり雨模様に。寒さも加わり今週一番の悪天候となった。カメラやレンズへの影響を気にしながら最終組の2人を待っていると、背後から大歓声が上がった。 振り返ると、降りしきる雨をもろともせず、片方の手には傘、もう片方の手にスマホやビールを持って声援を送るたくさんのギャラリーの姿があった。コースと同じく、この大自然によって鍛えられたギャラリーが選手の背中を押す。鉛色の雨空のもと、ティショットを打ち終えた2人は、この声援に応えながら出発のときを迎えた。
望郷 <アムンディ エビアン選手権>
生まれ育った街が海のすぐそばだからだろうか。時間に余裕ができると海や湖などの水辺に向かう習性が昔からある。 好きなゴルフコースを挙げたとしても、グリーンの速さや難易度、戦略性の高さといったことよりも、真っ先に出てくるのはいつもシーサイドコース。理由は単純。気持ちがいいからだ。 エビアンリゾートGCはほとんどのホールから湖を臨むことができる。湖であるがゆえ潮がなく、湿度も低いので、元々鮮やかな色がより一層「映え」てレンズに飛び込んでくる。コース自体が丘陵の中に作られており、高台から見下ろす景観はまさに「メジャー」だ。 フランス国旗が現すように、この国の人々は特に色彩にこだわりを持っている気がする。歳を重ねるごとにモノトーンを選んでしまっている僕たちとは正反対だ。見渡せばギャラリーのキャップやシャツのなんとも色鮮やかなこと。日本人がおそらく選ばない色の組み合わせでこの週末を思い切り楽しんでいる。 青い空と白い雲、透き通った湖に色鮮やかなギャラリー。世界のゴルフシーンの先頭をいくメジャートーナメントなのにどこか懐かしささえ感じる。それは夏休みに毎日遊んだ、カラフルなパラソルで埋め尽くされた海水浴場を思い出させるからだろうか。 なるほど、この景色を好む理由がなんとなく分かった。今年の海の日はフランスで迎える。