『ゴジラ-1.0』はなぜ怖いのか 山崎貴監督「ディテールの徹底追求、錯覚生む」
■配信では得られない 映画館での「体感」を大切に
――『ゴジラ-1.0』で視覚効果賞を受賞してから、いろいろと環境が変わったのではないかと思います。心境の変化などはありますか? 「自分自身は変えないように努力しています。というか、そんなことで変わるような人間にはなりたくない。ただ、海外からの仕事のオファーがものすごく増えましたね。アメリカのエージェントに所属したということもあり、びっくりするような大きな仕事の話も舞い込んでいます。怖く思う一方、そこに挑んでみたい気持ちもあります。アメリカに行って肌に合わなかったら、とっとと尻尾まいて帰ってくればいいだけの話かなと」 「一方で、別にアメリカに行かなくとも、世界公開を前提にした作品を作ることはできると思いますので、何かうまいやり方があるのでは、といろいろ探っている感じです」 ――今後も山崎さんはエンターテインメント路線の映画を撮り続けるのでしょうか。 「そうですね。基本的にお金を出してくれる人たちを不幸にはしたくありませんから、多くの人が喜ぶエンタメ映画を作る姿勢は自分の中で絶対に外してはいけないことだと思っています。『これは俺のアートなんだ』という映画を作る気持ちはさらさらありません。多くの人に、例えば地方のおじいちゃん、おばあちゃんでも、十分に楽しめる映画を作りたいというのが基本姿勢なので」 ――新型コロナウイルスのパンデミックがあってから、映画を配信で楽しむ人が増えています。そうした中で多くの人が映画館に足を運び、『ゴジラ-1.0』の迫力ある映像に興奮しました。 「ボクの立場的には、映画館に観客を連れ戻すための映画を作らなければいけないと思っています。家で見られる映画を映画館で見てもらうには、それなりのリターンを提供できなければ申し訳ない。じゃあ何を提供できるかというと、それは体感だと思うんです。映画館だとこんなにすごい体感ができるぞと。ゴジラもずっとそれを意識していました。地上波テレビやネット配信で見た人が、SNSで『映画館で見ればよかった』なんてつぶやいているのを見るとニヤニヤしますね」