『ゴジラ-1.0』はなぜ怖いのか 山崎貴監督「ディテールの徹底追求、錯覚生む」
■「リーダーというより、助けてもらう人」
――昔からマルチタスクで作品を作っていらしたんですね。 「極論を言えば、全部1人でやりたいんです。でも商業映画でさすがにそれは無理。だから尊敬できるレベルの能力を持ったスタッフとしか仕事はしません。『俺がやったほうがうまくいくのに』なんてイライラしたくありませんから。基本的にCGにしても、現場にしても、編集にしても、とにかく自分よりうまい人たちとしか組みません。そして対話がちゃんとできる人。『俺がやってるんだから文句言うな』というタイプではなくて、こちらの要望をきちんと聞いてくれる人がありがたい」 ――山崎さんの映画作りの様子が垣間見えたようで、大変興味深いです。 「昔、ティム・バートンという、アメリカの有名な映画監督の撮影現場を撮ったドキュメンタリーを見たんです。彼は現場に夢中になり過ぎてしまい、危険な現場でもスコープをのぞいたまま後ろ向きに歩いているんです。そしてスタッフみんなが必死になってそれを守っていた。ボクはあれが理想なんです」 「ボクが指令を出すというよりも、作品に入り込んで夢中になっているところに、スタッフたちがいろいろと期待を超える素晴らしい仕事を提示してくれるような現場であることが、一番幸せだなと思っています。いうなればボクはリーダーというより、お願いする人であり、助けてもらう人。だから、助けてくれそうな人に仕事をお願いするわけです。尊敬できるレベルの能力を持っている人たちに」 「ちなみに『ゴジラ-1.0』では、内々の試写の時に、仮の音響をボクがつけたんです。この映画は音もすごく重要で、試写のときに何もついていなかったら、偉い人たちが『迫力ねえな』とか言い出しかねないと思いましてね。実は音響効果も我ながら得意なんですよ。でもその後、本職の音響さんが作った音が入ったら、当たり前なんですが、まったくレベルが違う(笑)。でも、そういう一つ一つの体験が楽しいんですよ」 「CGチームにしても、才能のある人たちがやる気を出してやるわけですから、出来上がりは自分の想像をはるかに超えてくる。それを見て『うわ、すげえ!』と感動しっぱなし。ある意味、ボクは一番初めの観客なんです。『すっげえじゃん。ものすげえの作っちゃってんじゃん、俺たち』みたいなことの繰り返しでやってきているので、それは本当に幸せなことだなと思います」