『ゴジラ-1.0』はなぜ怖いのか 山崎貴監督「ディテールの徹底追求、錯覚生む」
■出発は、ミニチュア模型作りの職人
――あんなにゴジラの顔や脚が間近に迫ってきた映像は、今まで見たことがない気がします。正直とても怖かったです。 「ディテールがきちんとしているから、怖いんです。頭の中で、これは本物かもしれないと錯覚するんですね。作り物とわかってはいるけど、ストーリー的に怖いものなんだから怖がろう、という心持ちと、これは本物かもしれないと潜在的に思い込んでしまって怖がるのとでは、怖さの質が全く違う」 「西武園ゆうえんちの『ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦』という体験型のアトラクションの監督を2021年に務めたのですが、デカいスクリーンに怪獣が映り、それがすぐ近くまで迫ってきたら本当に怖いんだ、という感覚を、作り手でありながら改めて認識しました。そのときの知見も今回の作品には生きている気がします」 ――山崎さんは監督した作品の多くで脚本やVFXまで担当され、『ゴジラ-1.0』ではゴジラのデザインなども担当されました。メジャー映画で、これだけ多くの役割をこなされる監督は少ないように思います。 「やりたがりなんでしょうね、きっと(笑)。そもそもボクは、普通の映画監督と出発点が違う。先ほども話しましたが、映画の特撮監督をやりたかったんです。いま所属している白組という映像制作会社にも、当初はミニチュア模型を作る職人として入社しました。だからボクはミニチュアも作れるんです(笑)」 ――それがどういう経緯で、映画監督をされることになったのでしょう。 「昔の白組は、CGを使ったCMや、博覧会のためのCG映像をよく作っていたんです。わりと大ざっぱな時代で、初代の社長が学生上がりのボクに仕事を丸投げするんですよ。『今度の仕事は宇宙船が登場するんだけれど、キミ、こういうの好きだろ?』とか言って」 「ゼロ状態から絵コンテを描いて、社長のOKが出たら、ボクのようなミニチュア職人をいっぱい集めて一緒にセットを作り、撮影のディレクションやCGのチェック、背景との合成まで自分でして……。結局、VFX映画の監督みたいなことを、若いときからやっていたんです。扱っていなかったのは人間だけ、という感じですね。ある意味、普通の映画監督とは真逆の世界からやってきた人間なんです」