「紆余曲折」したその先にあるものってめっちゃおもしろい―地獄も見た野田クリスタルの芸人人生“これまで”と“これから”
満員のお客さんの前でゼロ笑い―地獄を見た2013年、それでもM-1優勝で全て解決と思ってきた
――去年は高得点だった。逆に最低点だったのはいつ頃で、何点ですか。 野田クリスタル: 最低点…、難しいですね。まあ、良くも悪くも何もしてないときだと思うので、最初のM-1参戦が終わったぐらいかな。2010年以降…、2013年あたりがたぶん最低点で、100点満点中4点ぐらいです。 その頃は本当に何もしていない。お笑いライブもほぼ出れないし、バイトしかしてない。別に、僕らがお笑いライブ出たくないと言ったわけじゃなく、仕事がない。年間通してまともな仕事なんて10本ぐらいだったんじゃないですかね。 ――大変でしたね。けれど今は、ステージに立つだけで歓声があがりドッと笑いが起きます。当時のお客さんの反応は? 野田クリスタル: もう、何も起きない。(ショッピング)モール系の営業とかだったら、僕ら出てきて、ゼロ笑い。お客さんがいないとかじゃないですよ、もう満パイ。500人、600人とかバーッといるところに出ていって、ネタやってゼロ笑い。あれ?今日のお客さん重いな、全然笑わないなと思った後に、ウーマンラッシュアワーさん出てきて大爆笑みたいな。地獄見せられるみたいな瞬間、何度も味わってますから。
「紆余曲折」は好きな言葉―考えて、考えて、その先にあったものって、めっちゃおもしろい
――売れない時期に芸人を辞めようと思ったことはありますか。 野田クリスタル: それは一回もないですね。僕自身がお笑い辞めるって発想はないですし、仕事ゼロでも辞めていないと思います。これといった理由がなく、絶対に辞めないと思っているので、(精神的に)追い込まれやすい。辞めれば楽なのに、辞めないという…。 売れない時期は、このままじゃいかんとは思ってはいます。ダメ出しできる部分を考えたら、もう切りないですよね。仕事がないのは焦りだったけれども、なんか言い訳できるところを探していた気がします。たとえば、M-1準決勝に行ってるんだとか、こういう作家におもしろいって言われたんだとか、そういうのを心のよりどころにしていました。 ――自分なりの打開策はありましたか。 野田クリスタル: 何も結果が出なかったとき、やっぱ落ち込むんですけども、でも落ち込みまくると逆にハイになることがあって。本当に落ち込むと、この仕事を辞めなきゃいけないのかとか、死ぬんじゃないかっていうのがよぎるじゃないですか。そうなると、なぜかハイになってくるんですよ。そうすると、何したら売れるのかっていう発想がやってくる。なんかギアが入って、自分の中で、じゃあ全部やってみようっていう。だからその瞬間が一番好きですね。全部試してやるか、っていう脳みそが逆ギレの状態。あの瞬間、めっちゃ強くなっているという自信がありますね。 ――その結果M-1やR-1で優勝。大きな転機になりました。 野田クリスタル: 面倒くさがり屋なんで、自分のやっていることをずっと貫き通してるほうが、まあ、楽は楽。かっこよく見えるし。変な言い方かもしれないけど、ブレなかったのはやっぱりさぼってたからでしょうね。ブレないとか、変えないって、言い方はいいですけど、何もしてないのと一緒ですからね。けど一方で、僕、変える人、好きなんです。一個のことを貫き通すよりも、試行錯誤して、紆余曲折してるほうが好き。「紆余曲折」は本当に好きな言葉です。 考えて、考えて、その先にあったものって、めっちゃおもしろいと思うんですよ。壁にぶつかりまくった先の状態は、すごい変ないびつなものであってほしい。そういう意味では、自分も“紆余曲折”してきたと思います。 ――紆余曲折は曲がりくねったという意味。たしかに、売れるまですんなりとはいかなかった。 野田クリスタル: 何回も失敗を重ねながら、どうしよう、どうしようと。立派なことは考えてなかったですね。「このお笑い界を」とか「自分の笑いを!」とかじゃなくて、「仕事ねえな」「全然ウケなくて嫌だな」、そういうのが目の前にあった。僕の“紆余曲折”はそういうこと。壁にぶつかる。ゴール地点が見えてないから、曲がる。ぶつかる、ぶつかる、ぶつかる…っていって変えていく。この先にあるものはどこにあるんだろう、そんなことを日々考えていますね。