千原せいじ 「がさつ力」が海を越え世界中で通用する理由
野良犬が“二度見”した、野生猿が懐く…など伝説の持ち主で、弟・千原ジュニアが「残念な兄」とイジる千原せいじさん(51)は不思議なキャラだ。本人も「デリカシーがない」と言うが、せいじさん特有の『がさつ力』は空気を読みすぎる世の中で、時にポジティブに映る。「直接話しかけるよりスマホに話しかける時代」にせいじ流コミュニケーションの極意を聞いた。 (ジャーナリスト・中村竜太郎/Yahoo!ニュース Voice)
「おまえは面白くない、楽しいだけ。勘違いしたらあかん」
――子どもの頃はどうでしたか。 高校卒業するまで京都の福知山にいたんですけど、周囲は、子どもの頃と変わらへんな、ほんまに楽しく生きてるなと言いますね。 父親は一級設計士で厳格な家。世間体を押しつけてくるので反発していて、地元じゃ居場所は見つけられないと、はやく独立したいと思っていました。子どもの頃は吉本新喜劇の役者か、川口浩探検隊の撮影隊なんかええなあとぼんやり考えていたのですが、実は、この夢を両方とも叶えた(笑)。新喜劇でデビューしていますし、探検隊じゃないけど仕事で世界中、73カ国訪問しています。だから幸せです。 ――売れると思いましたか 吉本に入るとき、連れが「おまえは面白くないねん。楽しいだけ。勘違いしたらあかん」とアドバイスしてくれた。まあそういう考えもあるなあと思ったけど、もう決めてたし。 NSC同期はFUJIWARA、なだぎ武、チャンス大城でみんなすごかった。当時竹若(バッファロー吾郎)と一緒に住んでいたんですけど、吉本天然素材で人気が出て、怒られるかもわからへんけど、竹若が売れるんやったら俺も絶対売れるやん、と根拠ない自信が(笑)。だから竹若に感謝です。 けど、売れていなくても芸人になった時点で夢は叶っています。新喜劇の初舞台で桑原和夫師匠のギャグ「ご清聴ありがとうございました」で全員こけなあかんところ、僕、ステージの後ろから見た世界に感動のあまり忘れてしまい、師匠とふたり棒立ちに(笑)。 ですから、なんだかんだ楽しいんです。ネタはジュニア任せやし、器用じゃないので生き方を選べない。右サイドも左サイドもいけるぜ、みたいな人いますけど、僕はグラウンドに出なくても、ベンチにギリ入って声だけ出している、これが俺やっていう生き方を選んだ。結局のところ勝手に芸人になりたいと言って、そうなった。別に何でもない職業やし、辞めたところで誰にも迷惑かけへん。失敗したとしても、好きな仕事で悩めるんやからそれでええやろ、という考えなんです。