倒産の危機→V字回復 外食大手の苦闘を描いた『熱狂宣言2 コロナ激闘編』 その舞台裏を聞く
金融面の交渉過程についてなぜ克明に記したのか
小松: 今回の執筆で困ったのは、東京都が、コロナ禍で打ち出した政策の内容が分かるデータを消してしまっていることだ。例えば、午後8時以降に街灯以外を消して街を暗くした。また、感染拡大を知らせるため、「東京アラート」と称してレインボーブリッジを赤く点灯させたりしていた。こうしたさまざまな政策の詳細が公式Webサイトでもう追えなくなっている。そこで、厚生労働省の政策を全部ピックした。 ――コロナからの回復の過程で、いかにして債務超過を解消したのか。ワラント債による資金調達など、金融面の交渉や技術についても書かれていたのには、驚いた。 小松: そこを曖昧にしては、企業がどうやって生き永らえてV字回復したのか、疑問を残す。コンサルや弁護士、全ての銀行にグリーティングを送って交渉していった。バンクミーティングが失敗したら本当に後がない、ヒリヒリするような最大の山場を、松村さんをはじめ幹部の人たちがどのように乗り切ったかを克明に追っていった。 また、DDグループは、2019年にホテルを運営する湘南レーベルをM&Aしている。そのため、コロナ後の事業計画において、食と観光の需要回復にすぐに応えられる環境にあった。そのポテンシャルが評価された。 松村: コロナ前からポートフォリオを組んでカフェ業態のM&Aを進めていた効果が出た。特に2017年にM&Aで取得した商業藝術がつくったお店が、よく貢献してくれている。新しく2024年5月には「カレッタ汐留」46階に「水色」という夜景がきれいな新感覚の和食の店、同年6月には精米仕立ての炊き立てご飯が味わえる「酒膳 穂のほまれ」を「新宿野村ビル」にオープンした。どちらも好調に推移している。 小松: 人は悪しき体験を忘れる。忘れることは悪いことではないが、東日本大震災の大津波と同じく、コロナ禍も、体験を通してしか学ぶことはできない。その貴重な記録を松村さんは残してくれた。そうした仕事に携われたことを誇りに思う。 ――『熱狂宣言2』はめでたく増刷になった。これからも危機を乗り切るための指針として読み継がれていくことを願っている。 (長浜淳之介)
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