倒産の危機→V字回復 外食大手の苦闘を描いた『熱狂宣言2 コロナ激闘編』 その舞台裏を聞く
若年性パーキンソン病と闘う
――前作の『熱狂宣言』では、パーキンソン病と闘いながらも、企業経営に真摯(しんし)に取り組む松村社長の人物像が大きなテーマになっていたように感じた。 小松: 「100店舗100業態」、東証一部上場を達成した松村さんには、本を書かないかというオファーがたくさん来ていた。しかし、経営者の成功本は残っていかない。文学として残したいという松村さんの思いがあって、私に書いてもらえないかと依頼があった。 松村: 私はサッカーファンで、高校の頃はサッカー部のキャプテンをしていた。また、小松さんが執筆された中田英寿さんのノンフィクションを読んでいた。 若年性パーキンソン病が進行し、患っていることをもう隠せなくなっていた。そこで、小松さんに私のことを包み隠さず書いてもらえないかとお願いして、公表した。 商談で体がふらついてしまって、「ふざけているのか」とあらぬ誤解を受けるようになっていた。若年性パーキンソン病というあまりよく知られていない病気がどういうものか。脳の思考には影響がなく、経営の判断を誤るものではないと知ってもらいたかった。 ――『熱狂宣言2』は、単なる『熱狂宣言』の続編ではない。コロナ禍という誰もが経験したことのない状況に直面した外食企業が、どう対応していったのかが描かれていた。2020年4月、第1回目の緊急事態宣言が出された頃は、感染拡大を招く3密(密閉・密集・密接)の元凶として飲食店(特に居酒屋といった夜に営業する業態)は悪者にされた。営業を自粛せざるを得なかった。 小松: 松村さんは、政府や東京都の政策の不公平さに納得できなくて、親友の近藤太香巳さん(NEXYZ.Group社長)に、都知事選に出馬するように要請していた。思い返せば2011年に私が松村さんと出会った頃から、近藤さんのことを「未来の東京都知事」と紹介していた。 松村: 「パッションリーダーズ」という経営者が交流する場を設立した近藤さんには、総理大臣になって日本を変えてほしいと思っている。まず自民党に入らないと難しいが(笑)。 元参議院議員の松田公太さん(タリーズコーヒージャパン創業者)は、「外食産業の声」という外食有志が立ち上げた団体をまとめるだけでなく、外食の窮状を訴えて、国や東京都と交渉してくれた。当時、個人店は救済されても、チェーン店には不利な措置が行われていた。 ――その当時、何とか日本の外食を守ろうと動いていた複数の団体が集結して、「食団連(一般社団法人 日本飲食団体連合会)」という組織ができた。 松村: 専務理事の高橋英樹さんからは、理事になって一緒にやってほしいと要請されたが、会社があまりにも大変な状況になっていたので、申し訳ないが引き受けられなかった。 小松: コロナが終わって、今は何もなかったように平常に戻っている。外食にとってコロナ禍が“負の遺産”となってしまったため、もう誰も振り返ろうとしない。その振り返りを本当にやったのは、松村さんだけではないか。