主要地ビールメーカーの出荷量が4年ぶりに減少 記録的な酷暑も物価高と天候不順に勝てず8.6%減
出荷量ランキング トップは13年連続でエチゴビール(新潟県)
2024年1-8月の出荷量メーカーランキングは、トップが地ビール醸造の全国第1号のエチゴビール(株)(新潟県)で、13年連続トップと圧倒的な強みをみせた。出荷量は2,258kl(前年同期比4.2%減)と減少したものの、2位以下を大きく引き離した。 エチゴビールの阿部誠社長は、「スーパー、コンビニ、酒店向けが不調だったが、飲食店、レストラン向けの販路を拡大した。小売業の販路拡大はもちろん、ブランド認知度向上のために地元を中心に飲食店への拡大を進める」と、国内での販売強化に意欲を見せている。 2位は「常陸野ネストビール」の(株)木内酒造1823(茨城県)が1,393kl(同8.4%増)、3位は「伊勢角屋麦酒」の(有)二軒茶屋餅角屋本店(三重県)の852kl(同6.3%増)、4位は「べアレンビール」の(株)ベアレン醸造所(岩手県)の585kl(同0.8%増)、5位は「網走ビール」の網走ビール(株)(北海道)で409kl(同2.5%増)と続く。 1-8月の出荷量が100klを超えた地ビールメーカーは18社で、前年と同数だった。 ◇ ◇ ◇ 出荷量ランキング第2位の(株)木内酒造1823は、国産原料にこだわり地産地消の酒造りに力を入れている。茨城県産の麦芽と生ホップを使用したクラフトビールを今秋、直営店やオンラインショップ、全国の酒販店向けに販売する。 また、出荷量第3位の(有)二軒茶屋餅角屋本店は2024年4月、同社クラフトビールが、イギリスの国際的ビール審査会「インターナショナル・ブルーイング・アワード」で最高賞の金賞を受賞し、国際的にも評価を高めた。出荷量ランキング上位メーカーは、国内にとどまらず海外への輸出強化に努めている。 その一方で、東京都の地ビールメーカーだったビアメーデル東京(株)(東京都江東区)は、コロナ禍で地ビール販売が伸び悩み、2024年1月に東京地裁から破産開始決定を受けた。また、アンケート調査でも「地ビール製造・販売を休止した。免許を取り消す予定」との回答もあり、先行きが見通せず解散や廃業に追い込まれるメーカーも出ている。 国税庁によると、2022年度の地ビール製造免許場数は383場、製造者数は460者と過去最多を更新した。1994年の酒税改正でビール製造免許に係る最低製造数量が2,000klから60klに引き下げられた。また、2017年の税制改正でビールの定義が拡大され、大都市圏を中心に地ビール業界への新規参入が増え続けている。 今回のアンケートでは、「クラフトビールが増えすぎることでの競合および品質低下」を懸念する回答が21社からあった。中長期的な業界への影響を心配する意見も少なくない。 一方、今後のクラフトビール市場について、「メーカーが増え、需要も高まっている今だからこそ、全体の底上げが重要と考えており、地元のブルワリー参加の協会を設立し、勉強会や情報交換、イベントを開催している。品質の底上げ、マーケティングの強化を横の連携につなげ、業界全体を発展させていくことが大事」(ベアレン醸造所)との声も寄せられている。 アンケートでは、「現状、需要増に対応できていない。設備、機器類のスペックが低いことに加え、人材難である。採用しても離職率が非常に高い。次世代の育成が大変困難な状況である」との声も聞かれる。内外の環境が激変する今、地ビールメーカーの戦略と経営手腕が問われている。