「五輪史上最難関」と呼ばれるパリのマラソンコース全容は? 市民ランナーの記者が走ってみると…、最大の鍵は過酷なアップダウン攻略
「五輪史上最難関コース」。今夏、パリで行われるマラソンの舞台はそう言われている。世界遺産のベルサイユ宮殿で折り返し、エッフェル塔を見ながらゴールを目指す。風光明媚と思われるが、花の都での42・195キロは過酷なアップダウン攻略が最大の鍵。全容を知るべく、パリに向かった。(共同通信=山本駿) 【写真】日本の金メダル、17個と予測 パリ五輪でデータ会社
※筆者が音声で解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ▽過去に9度フルマラソン出走経験 ただの市民ランナーに過ぎない陸上担当の筆者は過去に9度フルマラソン出走経験があり、自己記録は3時間4分台。今年1月中旬、欧州出張の機会に恵まれ、別取材の合間にパリへ。全てを走ることはできなかったが、要所で車を下車しながらコースを回った。 当日の気温は0度前後で寒さが残る中、既に五輪装飾が施されるスタート地点のパリ市庁舎前に立つと、自然と気持ちは高揚した。オペラ座の周りやルーブル美術館の前を通過。景色に気を取られれば、欧州特有の石畳で脚を取られる危険性もあり、位置取りを考えて慎重に進む必要がありそうだ。 ▽最大156メートルの高低差 序盤は平たんが続くが、セーヌ川にかかる橋を渡り終えた14キロ付近から一つ目の関門が待ち受ける。約6キロ続く上り基調の中に、小刻みに下り坂もあり、じわじわと脚に負担がかかる。木々に囲まれた20キロ手前からの急坂は、横を通り過ぎたマウンテンバイクの夫婦がすぐに諦め、歩いて押すほどだった。
この間の高低差はコース最大の156メートル。高速コースとして知られる東京マラソンが約40メートルなだけに、4倍近くの数字が過酷さを物語る。昨秋のマラソン代表選考会後の11月末に日本代表選手の一部も現地視察に訪れ、14キロ付近からの計20キロ弱を試走。女子代表の鈴木優花選手(第一生命グループ)が「ジョギングでも非常にきつい傾斜で、見たことのない長さの起伏だった」と言っていたことを思い出した。 ▽上り坂900メートルの難所は息切れ 23キロ付近のベルサイユ宮殿にたどり着くと、パリ市街地へと戻り始める。28キロ過ぎに控えるのがさらなる難所。コースの中で最も激しい斜度で、約900メートル続く上り坂は頂上が見えない。1キロ約4分ペースで挑んでみたが、途中で息切れ。やっとの思いで上り終え、今度は一気に市街地へと駆け降りていく。男子代表の小山直城選手(ホンダ)が「下りで外国人選手に思い切りいかれると、ついていけない。下り坂の見極めがすごく大切になってくる」と懸念していたが、ここでペース変動に対応するには相当な準備が必要だろう。