“消滅可能性”宣告前から苦心、豊島区人口対策 ワンルーム税15年目の検討
“消滅可能性”発表前から講じられていたワンルームマンション税による対策
消滅可能性自治体という衝撃的な発表によって、図らずもクローズアップされることになった豊島区ですが、それ以前から人口減少対策を講じていました。それが、豊島区独自のワンルームマンション税です。 「税を創設した2004年頃、豊島区内には約12万5000の住戸がありました。そのうちの40パーセント以上が30平方メートル未満の住戸、いわゆるワンルームマンションでした。また、単身世帯が全体の56パーセントを占め、豊島区は単身者が増加する傾向にありました。豊島区は、単身者でもファミリーでも長く住み続けられるような住環境を確保することを目指しており、そのためにも住宅ストックのバランスを是正する必要があったのです」と話すのは、豊島区区民部税務課の担当者です。 住宅ストックのバランス是正という目的から、豊島区は2004年に条例でワンルームマンション税を創設。ワンルームマンション対策に乗り出します。ワンルームマンション税では29平方メートル未満をワンルームマンションと定義し、9戸以上ワンルームがある集合住宅を課税対象にしました。ワンルームマンション税は、一戸につき50万円。建設時に納付することになっています。一戸につき50万円という税額は、固定資産税をもとに算出されました。 「同条例を制定した当初、『豊島区から単身者を追い出すための税金ではないか』というご批判もいただきました。しかし、税負担者はあくまでも建築主で、入居者ではありません。ワンルームマンション税は住宅ストックのバランスを是正し、定住率を向上させることが目的です。ワンルームマンション税で、税収を増やそうという意図はありません」(同)。 住宅ストックの均衡を目的にした税金のため、着工後でも何らかの事情で工事を中止した場合は納付された税金を還付されます。また、住宅を8戸以下に抑えた集合住宅や一部屋の面積を課税対象外ギリギリの30平方メートルにするといった、一見すると“税逃れ”のように見える集合住宅でも、「厳しく取り締まることはありません」(同)と言います。 ワンルームマンション税の税収は、2004年度から2016年度までの13年間で約46億円。年平均で、約3.5億円です。これらワンルームマンション税は、どんなことに使われているのでしょうか? 「ワンルームマンション税は制定前に、有識者間で議論されました。その議論では法定外目的税にすることも検討されましたが、『住宅政策に幅広く使える財源がいい』という意見から法定外普通税になりました。普通税であることから、住環境を向上させる政策全般に使うことになっています。具体的な事例を挙げることは難しいのですが、あえて例を挙げるとすれば区営住宅の改修費用に充てています」(同)。