パリでは茶室に人だかりが...海外で「日本の茶道」がブームになっている理由
外国人に響く、茶道に込められた「和の心」
茶道が外国人にうけているのは、人を思いやる、周囲を思いやるという和の心が学べるからだと思います。これまでにフランスのジャパンエキスポで、和想館ロンドン店で、山陰に来ている留学生に対して、繰り返し茶道を説明してきましたが、うけるポイントは、周囲への心配りが表現されているパフォーマンスの部分です。 たとえば、 1. 最初に茶室に入るときに、座って、扇子を自分の前において、挨拶して入る。この扇子をおくのは、扇子の向こうが上座、扇子のこちらが下座と、結界をはり茶室を敬う、自分を謙譲するためです。 2. 袱紗(ふくさ)で、茶道具を清めていく、これは、道具を清めるとともに、おいしいお茶をたてるために亭主の心を磨き、集中させているのです。 3. 客が茶をいただくときに茶碗を回すのは、亭主は客に茶碗の一番景色のいい部分が見えるように出しますが、客がその一番景色のいい部分に口をつけるときれいな景色を汚すことになるので、茶碗をまわして、正面以外のところに口をつけて茶を頂くのです。 といった説明をすると、いつも「おお~」と感嘆の声があがります。 このように、茶道の作法は、常に自分中心ではなく、周囲との調和を第一義に構成されています。万物に神様を感じ、周囲との調和を重んじる和の心を、所作に落とし込んだのが茶道なのです。 これは、自己主張を重んじる欧米の考え方からすれば、新鮮に感じることでしょう。特に昨今は、世界的な人口爆発下で、個々の国が生き残るために強く自己主張を発するようになってきています。 世界中の人々が、このままでは、地球は壊れてしまうと感じているのではないか。みんな心底では、他者を思いやり自分を抑えることが大切だと感じているのだと思います。だから、思いやりを具体的な行動パタン―として体系化した茶道に、外国人が惹かれるのだと思います。
茶道で心穏やか、優しい世界に
このように、茶の道のひとときは、心の雑念が消え、心が落ち着きます。また人を思いやる具体的な作法が身についてきます。茶道をたしなめば、いらいらすることが納まり、また人間関係が自然に穏やかになるというわけです。 正座ができないから、着物が着れないから、茶道は遠慮するなんて話も聞きますが、今は、椅子に座って行う茶道の手前もありますし、洋服で入室できる茶会もたくさんあります。茶道はそんなに窮屈なものではありません。多心の日々から心を解放できるオアシスを、もっとお気軽にご利用いただけたらと思います。
池田訓之(株式会社和想 代表取締役社長)