ロシアとの条約を北朝鮮が批准、発効へ 有事の際の相互支援定める
ロシアと北朝鮮が、6月に締結した「包括的戦略パートナーシップ条約」の批准手続きを相次いで終えた。条約には有事の際の相互の軍事支援が盛り込まれている。「事実上の軍事同盟」とも指摘されており、双方の軍事的な協力がさらに進むことが懸念されている。 北朝鮮メディアによると、金正恩(キムジョンウン)総書記が11日に批准のための政令に署名した。ロシアのプーチン大統領も9日に批准法案に署名しており、批准書が交換された日から効力を発する。 米国などは、北朝鮮兵を含むロシア軍側が、ウクライナ軍が越境作戦を展開するロシア南西部クルスク州で近く、大規模な反撃を始めるとみており、それに合わせた可能性もある。 条約は6月に訪朝したプーチン氏と金氏との間で結ばれ、計23条からなる。第4条で、一方が武力侵攻を受けて戦争状態になった場合、「遅滞なく、保有するすべての手段で軍事的およびその他の援助を提供する」と定めている。 1961年に当時のソ連と北朝鮮が結んだ「友好協力相互援助条約」にも軍事援助に関する条項があった。2000年にロシアと北朝鮮が結んだ新たな条約にはなかったが、それが復活することになる。 北朝鮮はウクライナ侵攻を続けるロシアへの弾薬などの提供に加え、兵士の派遣に踏み切った。韓国政府は、6月の条約締結後に兵士派遣の議論が始まり、ロシアの政権幹部が訪朝して具体的な手続きを詰めていったとみる。 派遣開始後の先月末からは北朝鮮の崔善姫(チェソンヒ)外相が訪ロし、ラブロフ外相やプーチン氏と会談した。韓国の専門家は、北朝鮮が条約の批准を前に、兵士派遣の見返りなどについて改めて議論した可能性もあると指摘する。 条約の発効に伴ってロシアと北朝鮮の軍事協力がさらに強まれば、影響はウクライナ情勢だけでなく、東アジアにも及ぶ恐れがある。(ソウル=貝瀬秋彦)
朝日新聞社