入場料20ドル、4試合入替なし…日本と米国の高校スポーツはどう違う、意外な共通点はテレビ解説
共通点を感じたのは「テレビ中継の解説」
さて、肝心の試合だが、第4試合を少しレポートしたい。ディビジョン1のハドソンビル高校とデトロイトカス工科高校との試合。ハドソンビルは州の西側にあり、フォードフィールドまでは車で3時間近くかかる。一方のカス工科高校はフォードフィールドから徒歩圏内。 試合は途中まで圧倒的にカス工科高校の優勢。第3Q残り11分9秒で35-0とリードすると、アメリカの中学や高校の運動部で採用されているマーシールールが適用された。マーシールールとは試合が一方的な展開になったときに、試合時間の進行を早めたり、コールドゲームのような形にしたりすることだ。ミシガン州の高校体育協会では、後半に入った状態で35ポイント以上の差がついたときには、時計を止めずにそのまま試合を進行すると規定している。しかし、ハドソンビルが7点を返して、28点差となったため、通常通りに時計を止めるルールに戻った。 第3Qで54ヤードを走ってタッチダウンしたカス工科高校のアレックス・グラハムという選手は1シーズンだけフロリダ州のIMGアカデミーのアメリカンフットボール部に在籍したが、再びカス工科高校に戻った。高校生アスリートの転校もときどきある。彼は11年生(高2)の時点で、いくつかの大学アメリカンフットボール部からオファーを受けており、すでにコロラド大学に進学することを明らかにしている。 日本とはいろいろと違いがあるアメリカの高校スポーツだが、共通点を感じる場面もあった。そのひとつがテレビ中継の解説だ。一方的な展開になったときには、リードされているチームのミスなどを指摘するのではなく、よい材料を探して取り上げるようにし、点差を縮めたときには、決して勝利の確率が高くなくても、踏ん張りに対して前向きなコメントをし、中継の教育的という枠組みをしているようだった。 谷口 輝世子 デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。
谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi