駐ウクライナ大使が語る、各国が「支援疲れ」で終わってはいけない理由 「ロシアの侵略を許せば、別の地域でも…」日本に期待される役割とは
「今後どのように戦争を行い、どのように和平を構築するかは、一方的に侵略されている側のウクライナが決めることです。ウクライナ側の決定を尊重し、支援すべきだというのが日本の基本的な考え方です」 「ウクライナの指導者たちは、いたずらに戦争を長引かせたいとは思っていないはずです。クリミア半島の一方的な併合が行われ、東部ドンバス地域で戦闘が始まった2014年以来の経験を踏まえると、ウクライナにロシアに対する不信感があるのは当然です。まず戦闘行為をやめ、軍隊を国境の外に出すのが先決だと主張しているのも当然だと思います」 「ウクライナとしては、侵略を始めたロシア側が戦闘をやめる用意があるのか、軍隊を引く用意があるのかどうかを見極めない限り、現時点で具体的に停戦の話ができないのだろうと理解しています」 ―ロシアのプーチン大統領は、ウクライナとの停戦交渉の意思をたびたび示唆しています。 「侵略した側には、停戦したいのであれば侵略を止める義務があります。ロシアは東部・南部4州やクリミアを占領し続けています。それを棚上げして停戦する用意があると言われても、真剣な姿勢とウクライナ側が受け入れないのは当たり前だと思います」
―これまで専門としてきたロシアに対し、今思うことは。 「ロシアはソ連時代から日本の安全保障にとって重要な隣国の一つだったので、ソ連について学ぶことに大いに意義を感じました。ソ連崩壊後の新生ロシアが、欧州の平和と安定に貢献するような国になることを切に願ったのを覚えています。あれから約30年、そのロシアがこのような非道で暴虐としか言いようがない侵略戦争を始めたことに対しては、何とも言えない悲しみと怒りを感じます。ロシアには違う道を進むチャンスがあったと思います」 × × × まつだ・くにのり 1959年、福井市生まれ。東大卒。82年外務省入省。欧州局ロシア課長、駐パキスタン大使などを経て2021年10月から現職。