『ゴルフが楽しくない…』という質問に誠実回答 勝みなみが地元の子どもたちに“一番伝えたかった”メッセージ
『なかなかうまくならなくて、ゴルフが楽しいと思えない。どうやったら楽しくなりますか?』 【写真】こんな小さい子も頑張ってました! 自らが初めて立案し、27日(金)に実現したジュニアイベント(会場:鹿児島高牧カントリークラブ)の参加者のひとりから、こんな質問が投げられた時、勝みなみは瞳を閉じ、その答えを慎重に探った。そして出したのが、「私もゴルフを始めたての頃、楽しくなくて一回やめた」という自らの経験も参考に導いた、こんな答えだ。 「1回やめて、また『やりたい』と思ったらやればいい。それでも遅くない」 無理に思いとどまらせようとするわけでもなく、何かを急かすわけでもない、“ゴルフの先輩”としてとても自然な言葉のように聞こえた。 「鹿児島のジュニアに貢献したい」という思いから、勝は生まれ故郷で今回のイベントを立ち上げた。そこに集まったのは、抽選をくぐり抜けた小学生から高校生まで29名の男女。コースでのレッスンやアプローチ対決の後にはトークセッションも設けられ、そこでは多くの質問に丁寧に答えた。冒頭のシーンも、そのなかの一幕だ。 イベント後の取材で、この言葉の真意について話す。「楽しくないなら無理にやるべきではないと思う。いったんお休みしてもいい。私も練習したくない時は、次の日に回すことだってありますし。(同伴した)家族もいたので、何て言えばいいか、言いづらさもありましたけど、このままだとゴルフを嫌いになってしまうと思ったので」。勝らしい、誠実な答えだった。 ただ、その質問をしてきた子には、こんな言葉も送っている。「私はスクールに入って、仲がいい友達ができてアプローチやパター対決をしたり、仲間とゴルフをする楽しさを知った。1人だと楽しいって感じられないよね。仲がいいゴルフ友達を作るのもいいと思う」。そして、この“ゴルフを通じてたくさんの友達を作って欲しい”という思いこそ、今回のイベントで子どもたちに一番に伝えたいことでもあった。 勝は鹿児島高1年時に出場した2014年の「KKT杯バンテリンレディス」を、史上最年少(当時)の15歳293日で制し、一躍ジュニアゴルファーの星になった。その後、プロ転向を果たすと国内ツアーで「日本女子オープン」連覇(21、22年)など7勝を上積み。昨年からは米国に主戦場を移し、世界最高峰の舞台で戦っている。これほどジュニア時代からの成長過程を、多くの人々に知られる存在も少ない。 その勝に、『ジュニアゴルファーに最も伝えたいことは?』と聞いて返ってきたのが“友達”の話。熱っぽい言葉で、こんな想いが語られた。 「ゴルフで、いい人間関係を作って欲しい。ゴルフは老若男女が楽しめる競技で、そこで礼儀や学校では学べないことを得ることもできる。人間として成長できるスポーツだし、そこでできた仲間に私も救われてきました」 この日のイベントには、ジュニア時代から親交の深い同い年の中西絵里奈や、2学年下の男子プロ・上村竜太らも参加。幼なじみたちの仲睦まじい姿も印象的だった。特に幼少期から切磋琢磨を続けた中西については、トークセッションの際、「私は絵里奈がいたから、今、プロとしてここにいられると思っている」というほどだ。仲間の大事さは今も痛感している。 来年3年目を迎える米国ツアーでも、3つ年上で、2020年の「全米女子オープン」覇者のキム・アリム(韓国)と親交を深め、「調子が悪い時期に、『相談にのるよ』って言ってくれたのはうれしかった」と信頼している。これもやはり「人のつながり」を感じさせている関係といえる。 「きょうのイベントのなかで、1人でも仲良くなれる人が見つかったらそれがうれしいですよね。これから切磋琢磨して…。そういう風になって欲しいですよね」 自身の幼少期にはこうやって直接、プロゴルファーと接することができるイベントはなかったとも話す。だからこそ、鹿児島でそれを実現したかったというのも今回のイベントを立ち上げた理由にある。技術だけでなくその思いを後進に伝える。勝にとっても貴重な時間になった。(文・間宮輝憲)