腸活の最新キーワード!健康状態をアップグレードしてくれる「ポストバイオティクス」とは
これまでの研究から分かっていること
初期のエビデンスを見る限り、ポストバイオティクスは腸のバリアを強化して炎症を減らし、免疫力に影響を及ぼす胃腸の粘膜(腸壁の一番深いところにある層)を維持することで、有害な細菌に対する体の抵抗力を高くする。 ヒト実験の結果、ポストバイオティクスは高齢者に対するワクチンの効果を高め、命を脅かす可能性のある小児感染症(細菌性の下痢など)、胃腸疾患(大腸炎など)、尿路感染症といった幅広い問題の改善に役立つとも言われている。「しかも、これは始まりに過ぎません」とモリソン。「さらなる研究が必要なのは確かですが、ポストバイオティクスの健康効果に関する既存のエビデンスは非常に有望です」 事実、ポストバイオティクスは女性の健康管理にも有効とされている。2018年のメタ分析では、大豆に含まれるイソフラボンという成分を摂取すると、エクオールというポストバイオティクスの産生が促進されることが分かった。エクオールはエストロゲンと構造が似ており、更年期障害の症状(特にホットフラッシュ)の程度と頻度を下げると言われている。 ポストバイオティクスには、がんと戦う作用もある。その証拠として、2017年に発表された論文は、短鎖脂肪酸の一種である酪酸というポストバイオティクスがアポトーシス(細胞の自然死)というプロセスの制御に役立つことを裏付けている。 つまり、ポストバイオティクスは、がんの治療にも役立つ可能性があるということ。「ヒトの健康という研究分野において微生物が宿主の健康に及ぼす影響に対する理解が深まったのは、この数十年で最もワクワクする話の1つです」とヒル博士。それでもポストバイオティクスを用いた薬の開発には至っていない。「私たちは、この新しい理解をもとに医療介入や治療法の開発を進めなければなりません」 栄養士のメイズ・アル=アリによると、それが実現した場合、ポストバイオティクスがプロバイオティクスより大きな効果を発揮する可能性は高い。その理由は意外とシンプルで、腸内のプロバイオティクスは活性の“生きた”微生物であるのに対し、ポストバイオティクスは不活性の“死んだ”微生物だから。 「これが理由でポストバイオティクスはプロバイオティクスより安定しているのです」とアル=アリ。「安定していればそのぶん、抽出・標準化・輸送というプロセスを経てサプリメントにするのも簡単です」。プロバイオティクスの市場規模が推定約600億ドルであることを考えれば、ポストバイオティクスがいかに画期的(で儲かる商売)となりうるかも想像に難くない。