【バレー】「こんなにやれたら楽しいよ」「将来、なれるように頑張って」国内リーグの現場でトップ選手と中学生“ジュニアチーム”が育む温かな交流
ジュニアチームの面々がトップチームの競技運営に携わっている
ある選手は、トッププレーヤーとしてのお手本を自らの姿で示した。ある選手は、これからのバレーボール界を担う子どもたちへ励ましの言葉を送り、夢をふくらませた。国内最高峰リーグ「大同生命SVリーグ」そして「Vリーグ」の2024-25シーズンの最中、現場で見られた光景がある。 【ギャラリー】将来のVリーガーたちが会場で競技運営を手伝う様子 照明が落とされ、レーザーライトで彩られたコートに選手たちが一人ずつ駆け込んでくる。パナソニックアリーナの演出に、来場した観客は胸を躍らせる。 「すげぇ…」 ため息まじりに興奮を隠せずにいたのは、コートの角に構える中学生たちも同じだった。彼らは大阪ブルテオンの傘下である「大阪ブルテオンU15」の選手たち。その日はトップチームである大阪Bのホームゲームであり、彼らはボールリトリバーやモッパーとして競技運営に携わっている。これまでにも見られた光景だが、選手によっては緊張している様子も。中学生の一人が、背筋を伸ばして口にする。 「僕、今日が初めてなんですよ」 なんたって目の前では文字どおりトップの、日本代表や世界の名だたる選手たちが試合を行う。そこでミスをしてゲームのさまたげになってはいけない、そんな彼らなりの使命感がうかがえる。 と同時に、これは彼らが憧れの選手をリアルで見ることができる特別な体験であった。そんな視線を受けること、そして中学生たちが競技運営を手伝うことに、大阪Bの西田有志もまたトッププレーヤーとしての使命感を語った。 「ああして試合をサポートしてくれることをうれしく思います。それに自分が彼らの年代のころは、近くで試合を見る機会がありませんでしたから。 たとえ機会は多くなくても、まずは試合で勝つ姿を見せたいと思いますし、『バレーボールはこんなにやれたら楽しいよ』『プレーの引き出しが増えたらおもしろいよ』と思ってもらえるようなプレーをしたいです」
サントリー大阪の藤中謙也が“後輩たち”へかけた言葉
大阪Bでは彼らのようなU15世代の“ジュニアチーム”や小学生たちのスクール生は、同じパナソニックアリーナで活動している。練習試合が重なることはまれとはいえ、ときには同じ空間にいることも。そんな現実が、憧れを助長させる。 例えば、サントリーサンバーズ大阪ではこんなエピソードがある。ジュニアチームの「サンバーズジュニア」で今季のキャプテンを務めた、仁木遼成(箕面三中〔大阪〕3年)はうれしそうに話してくれた。 「体育館でサンバーズの藤中謙也選手とお会いしたときに、『今から練習か?』と聞かれたんです。そうしたら『将来、サントリーの選手になれるように頑張って』と言ってもらえました」 仁木が憧れの選手に「ミスが少なくて、チームにとって不可欠な存在であるところ」と藤中(謙)を挙げたのも納得だろう。何気ないひと言が、これからのバレーボール界を担っていく彼らにとっては何よりの励みになる。 それは他のチームでも見られる光景だ。今でこそリーグのライセンス要件にジュニアチームを含めたアンダーエイジカテゴリーへの普及・育成が盛り込まれているが、先んじて2010年代から取り組んでいた、とくに男子チームでは同じ体育館でジュニアチームやアカデミーが活動し、それは今も総じて変わらない。