【バレー】「こんなにやれたら楽しいよ」「将来、なれるように頑張って」国内リーグの現場でトップ選手と中学生“ジュニアチーム”が育む温かな交流
ジュニアチーム出身の選手も今後さらに増えていくと予想される
やがて、そうした中学生たちが高校そして大学へとステップアップし、なじみあるトップチームへ“里帰り”を果たすケースも徐々に増えてきた。 大阪Bでいえばセッターの中村駿介や元選手でマネジャーの牧山祐介はジュニアチーム出身。また現在はイタリア・セリエAのミラノでプレーする大塚達宣も卒団生であり、大学時代もパナソニックアリーナに顔を出しては「ジュニアの練習、手伝いましょうか?」と持ちかけていたほど。 ほかにも東レアローズ静岡では、今季からルーキーとして加入し豪快なアタックでインパクトを残している山田大貴はジュニアチーム出身の“生え抜き選手”。同じように、ウルフドッグス名古屋への内定が発表された山崎真裕(中央大4年)も“ジュニアチーム出身第1号”だ。こうした流れは今後さらに加速すると予想され、また、それが育成組織としてのジュニアチームが持つ役割の一つでもあることには違いない。 リーグ全体におけるジュニアチームの動きとしては、2015年に「Vリーグジュニア選手権大会」がスタート。当時は男子チームのみでの実施だったが、その後は参加チーム数も年々増え、今年は「SV-V.LEAGUE U15選手権大会」と装いを新たに男子24チーム、女子28チームで行われた。昨今では女子でもSVリーグ、Vリーグ問わず各クラブが育成事業に着手し、チームのOGたちが講師として携わるケースも見られる。
さまざまなかたちでバレーボール界に携わるきっかけにも
現役としてプレーしながら、若かりしころの自分と姿を重ねる一人は、日本製鉄堺ブレイザーズの重留日向。地元は堺市で、堺ジュニアブレイザーズで過ごしたのちにトップチームへ入団を果たした。重留も以前、ホームゲームで競技運営に励む“後輩たち”の姿を見て、こう話していた。 「懐かしいなという気持ちになりますね。僕も同じように、コート周りに座ってボールを回していた時期がありましたから。ここに戻ってこられるんだよ、という姿をジュニアチームの選手たちに見せられたらと思います」 そんな堺ジュニアブレイザーズの面々は、日本製鉄堺体育館でトップチームのホームゲームが終わったあと、場内の仮説応援スタンドをてきぱきと解体していた。その手際のよさに、見ているこちらも感心せずにはいられない。聞けば、早く片づけると、そのぶんだけ練習時間が増えるからなのだとか。その様子を見ながら、チームを指導する中川大成監督は「プレーヤーとしてだけでなく、試合や大会を運営するうえではこんな役割もあるんだ、と知ってもらう機会になればと思って、彼らには取り組んでもらっています」と語った。 SVリーグは“2030年に世界最高のリーグになる”ことを掲げて現在進行中だ。その旗を振る一般社団法人SVリーグの大河正明チェアマンは「バレーボールをプレーする選手を始め、指導者や審判それに運営に携わるスタッフが、SVリーグにいることを誇りに思えるような場にするのが私のミッションだと考えています」と話す。 ジュニアチームの面々がいずれどんな職業に就くかはさておき、体験したことは将来の人生設計のヒントとなるだろう。そして今の現役選手たちがもたらす温かな熱が、いずれ日本中で昇華されることを願うばかりだ。 中学生の彼らが社会に出た、まさにそのときが2030年である。 (文・写真/坂口功将)
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