退職は人生の終わりじゃない 「模擬オリンピック」で金メダル目指す高齢者たちの挑戦 #老いる社会 #ydocs
ロイター
パリまで行くことができなくても、五輪気分を楽しみたい――そう考えた米ロサンゼルスの高齢者たちが今年の夏、地元で模擬オリンピックを開催した。70―90代の「アスリート」たち約60人が、リレー競争やバスケットボール、コーンホール、ダンスなどの競技に参加した。 イベントを開催したのは、高齢者介護施設「ベルモント・ビレッジ・シニアリビング・ハリウッドヒルズ」。施設のスタッフらは、退職は人生の通過点に過ぎず、高齢者にはまだまだ物事をやり遂げる能力があり、何かをやり遂げることで新たな人生の充実感や意味につながると信じていると話す。 一方施設の利用者たちは、スタッフが自分たちをまとめるのが上手だと話す。ありのままの自分たちを受け入れてくれるから、自発的に外に出て参加してみようという気が湧いてくるのだという。 そんな施設のスタッフと、高齢者たちが一丸となって作り上げた手作りのオリンピックをのぞいてみた。 「いままで五輪は見逃したことがないよ」――そう話すのは、84歳のアンソニー・アキーノさん。「私は長生きできたことを誇りに思っているし、これからの人生も楽しみにしている」。アキーノさんはコーンホール競技で金メダルを獲得した。 「ここは私たちにとって素晴らしい環境だよ。重要なのは、このプログラムが私たちをありのままで受け入れてくれることだ。多くの人が自ら外に出て参加できるのがよい点だ。毎日自分に自信を感じているので、明日が楽しみだ」とアキーノさんは語った。 アキーノさんは金メダルを見せてくれた。「質屋では1銭にもならないけどね」と言って笑った。 「私たちのアスリートたちはとてもやる気に満ちている。毎日練習してきた」と語るのは、この施設の記憶プログラムコーディネーター、ジェシカ・コチューさんだ。高齢アスリートたちは筋トレや協調運動も行ってきたという。「リレーやバスケットボール、ゴルフの練習もした。彼らはとても楽しみにしていた」 コチューさんは、退職を迎えることは人生の通過点に過ぎないと話す。「多くの人が退職を、(人生の)終わりだと思っているが、私たちはそう信じていない。まだ目的や意味があり、重要性も残っている。まだまだ(物事を)やり遂げる能力があり、それが充実感や意味につながると信じている。(人生の)金メダルを目指すのに年齢は関係ないということを認め、彼らを応援し続けている」 パリ五輪が終わり、4年後に聖火が地元ロサンゼルスにやってくることが、ベルモント・ビレッジの高齢者たちにとって新たな希望になるだろうと、コチューさんは考えている。「ベルモント・ビレッジの高齢者たちが、2028年のロサンゼルス五輪の開会式に招待されることを願っている。それが私たちの目指す大きな目標だ」 ※映像は7月24日に撮影したものです。 (制作:Allysyn Landrum, Jackie Luna, Omar Younis 翻訳・字幕:新倉由久) この記事はロイターとYahoo!ニュース ドキュメンタリーの共同連携企画です。 #Yahooニュースドキュメンタリー #ロイター ---------------------- 「#老いる社会」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。2025年、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となります。また、さまざまなインフラが老朽化し、仕組みが制度疲労を起こすなど、日本社会全体が「老い」に向かっています。生じる課題にどう立ち向かえばよいのか、解説や事例を通じ、ユーザーとともに考えます。 ----------------------