【知らないと失敗する!】実際にGMT時計を作って知った。セイコー、シチズンの汎用ムーヴメント事情(4)
時計を作っているなかで「なぜ」と感じた国産汎用ムーヴメントの意外な点についてお届けしている当連載。先週は GMT機能を装備した国産外販用自動巻きが、セイコーとシチズン・ミヨタから2023年になって初めて、しかも両者揃ってリリースされた。それに伴いGMTウオッチの製品化が加速していることを紹介した。 【画像】8機種の国産ムーヴメント搭載、新作GMTウオッチを写真で見る 4回目となる今回はその続編として、これまで筆者も当たり前のこととしてあまり気にもしていなかったが、今回GMTウオッチを実際に作ってみてあらためて「なんでだろう」と不思議に感じた点について書きたいと思う。 前回と重複するがまずはGMT機能について説明すると、住んでいる国の時刻(ホームタイム)と時差のあるもうひとつの国の時刻(ローカルタイム)の二つの時間帯をひとつの腕時計で表示できる機能である。そのため時分針とは別にもうひとつGMT針と呼ばれる副時針と、24時間表示のベゼルを装備しているのが一般的な仕様だ(2枚目の写真参照)。 そしてここからが本題。このGMT機能だが、第2時間帯の設定方法が違う2種類のタイプが存在することを意外と知られていない。ひとつは“時針単独操作型(フライヤー型)”、もうひとつは“GMT針単独操作型(コーラー型)”だ。これは、日常で実際にGMT機能を使う際に、その目的によっては使い勝手が大きく違ってくるため、ユーザーにとっては本来とても重要なのである。
しかしながら、メーカー情報には「GMT機能」あるいは「デュアルタイム表示」の記載だけで、それがどのタイプなのかをひと目でわかるように明示しているものが極めて少ない。このことに筆者もあらためて「何で」と驚かされたというわけである。操作方法の取扱説明書を読んではじめてどちらのタイプかがわかるというのがほとんどだった。 ではこれらはどう違うのか簡単に説明すると、“時針単独操作型”は、時針だけを動かすことができるタイプのため海外へ出張した際に渡航先の時刻を時分針に簡単に変更できるというメリットがある。つまり海外旅行に適したGMTということで“トラベルGMT”とも呼ばれたりする。なおホームタイム(日本時間)はGMT針で常に確認できる。ちなみにロレックスの現在のGMTマスター II はまさにこのタイプだ。 一方の“GMT針単独操作型”は、GMT針だけを操作するタイプ。時分針はホームタイム(日本時間)のままでGMT針だけを移動して海外の時刻をベゼル上の数字に合わせる。設定が簡単なため日本にいて海外とのやり取りの際など、メインは日本時間で時々海外の現在時刻を確認したいという場合に好都合なタイプだ。こういった点から“オフィスGMT”とも呼ばれる。